7 一日目の2 フェリーにて
フェリーに乗る前に近くの複合店でパンと弁当を買っていたオレたちは、今夜の宿であるツーリスト寝台という通路を挟んで『Ⅱ』の形に並べられた天井の低いベッドに腰下ろした。
買って来た食事は翌日フェリー内で食べる三食。旅先で金に困らんよう、出来る限り安く済ませられるところは済ますと決めていた。
「風呂行くか」
と言って着替えを用意していると、オレは気が付いた。
「パンツあらへん」
鉄朗が「あ」という顔をした。
「ウソやろ、入れ忘れたん? オレこっからノーパン?」
「一枚貸そか?」
「そんなもんシェア出来るか、汚い。フェリーの物販とかで売っとるかな」
「アカン」
「何が」
「こういうところの物販は高いって言うとったやないか」
「買うんオレやないか。高かろうがノーパンよりはええ。金払うよ」
「北海道着いてから、しまむらとかで買ったらええやないか」
「ほんじゃあノーパンで北海道入ることになるやないか」
「なんも悪いことあらへんがな」
「悪いわい! 節約は贅沢を絶つことであって苦しむことちゃうぞ」
「アカン。知らん。アカン」
「なんやお前……」
「大丈夫やって。しまむらやぞ。めっちゃあるって。北海道はあるって」
「幻の大地ちゃうぞ。北海道はあるわ。道民がノーパン許さんマンならどうすんの」
「ズボンの上から分かる訳ないやろ。なんやねん許さんマンて」
「試される大地やぞ。道民は顔見たら分かるんじゃ。あ、こいつノーパンやなって」
「分かるかそんなもん。もうええから風呂行こや」
結局、ノーパンで北海道に入ることにした。
連れ合いのミスで、オレ(ノーパン)の前途は多難。
早く、早く北海道に入って黄金の都(しまむら)を見付けねば。
人間性(パンツ)を取り戻すんや……。
風呂上がり、素肌に着たジャージはごわごわしてた。
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