6 一日目の1 フェリー搭乗
家の玄関前には二台のバイク。
白いリトルカブと青いスーパーカブ。オレのリトルカブには銀マットやランタン、着替えの入ったカバンとテントを括り付け、鉄朗の方にはアイリスオーヤマのリアボックスを搭載した。他にもガソリン携帯缶やパンクの修理道具を用意している。
「ほな行こか」
朝食を軽く家で済ませたあと、スマホのナビを作動させているオレが先頭に走り出した。夏の暑さも、走り出せば風にまとわれて気にならない。
旅の行程は京都を抜けて舞鶴へ向かって、そこからフェリーに乗って北海道へ入り、日本を縦断して屋久島へ行こうということになった。屋久島をゴールに決めたんは、屋久杉を一回みてみたいという単純な理由やった。
都会を少し離れただけで、田園風景が広がり始めた。
信号の数も減って、一定の速度でのんびり走る。背の高い建物も徐々に減って、青空が広がった。
昼飯は道の駅丹波マーケスのフードコートで摂ることにした。
この時点で三時間近くバイクに乗っていて、長時間のツーリングに慣れていないので、もう肩が凝った。頻りに伸びをしながら、フードコートのうどん屋で月見うどんを頼んだ。
特別うまいという訳でもないうどんを食べ終えて、更に北へ向かう。
走り続け、舞鶴へ入ると、舞鶴赤レンガ倉庫群という場所を見付けて、その外観の珍しさに惹かれて道草を食うことにした。
日本海沿いにあるレンガ倉庫は、潮の香りがしてた。
赤いレンガの近くの港に675と書かれた戦艦があって、鉄朗がそれでボケた。
「あれが北海道に行くフェリーか」
「北海道に何する気やねん」
「アイヌぅうう……」
「なんで血に飢えとんねん」
「アイスぅうう……」
「誰が食いたいもん言えっちゅった」
小ボケを回収して、オレたちはフェリー乗り場に向かった。
北海道へ向かう「あかしあ」というフェリーは搭乗が零時からで、九時ごろに到着したオレたちは近場の町を散策して、チェーン店の寿司屋で晩飯を済ませた。
零時になり、バイクのままフェリーに乗り込むことになると、妙にそわそわした。
一番最初に到着したオレたちだったが、先に搭乗するのは車の客からで、車が乗り終わるまでにしばらくが掛かった。
車が乗り終り、それじゃあ、と職員の案内でフェリーに向かう。
どこから聞こえてるんかは分からんが、そこら中で轟々と音がする。
職員がバイクを船に固定し、必要な物を持って船の内部に向かった。
様々なパイプの通った細い通用口を移動していると、何だかわくわくした。
学校にもこういう廊下があったらええなぁ、とそんなアホな話をした。
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