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「失礼ですが、チェック、なさいますか?」

「え」

 女性が席を立ってから男性に声を掛けてみた。店側が会計を促すなんてとんでもない話だけど、男性が財布に手を掛けて迷ったような表情をしていたから。

「いいですか?」

「もちろんです。彼女が返ってくる前に済ませてしまいますね」

 女性が席を立った時に会計を済ますのはスマートな男性の行動だろう。けれどあれだけ彼女が言っていたのだから払うのを躊躇ったのだろう。

「すみません、本当は彼女に払ってもらった方が良いんでしょうけれど」

「ふふ、けれど女性に支払ってもらうのは少し恰好がつきませんものね」

「はい。それに、お礼だからって今日彼女に払ってもらったらもう次はないかなって言うか」

「ほう」

「あっ、でも彼女、いやあの子、は、まだその、付き合ったりとかはしてないっていうか」

 ふーん“まだ”付き合ってない、のね。ふーん。

「お礼は今度、ランチ、とかにでもしたら、もうちょっと一緒に居られる時間が増える、かな、とか思ったりして。ダメ、ですかね?」

 ギュッと眉根を寄せて不安そうな瞳でこちらを見る。いやいや、ダメなもんか。それがきっかけで二人の仲が良い方向へ転がる、なんてことも期待できそうだし。女の子の様子を見ても。嫌そうな顔してなかったしね、なんて。

「上手く行くようにお祈り致しております」

「ふ、ありがとうございます」

 世の中の男、皆が皆スマートなわけじゃないから。皆不器用なりにスマートを演じているわけで。

「あーっシロサキさんっお会計しましたねっ!」

 さぁさぁそんな顔しないで。頑張れ青年!

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