世界最強の
カイムが看守室もとい押収室に出ると7人の兵士に取り囲まれていた。
「脱走者か!?」
「見つけたぞ!」
兵士達が大声で叫び出す。
そんな行為を気にもとめずカイムは状況を把握するようにあたりを見渡す。
そして一通り状況が分かったのだろう。
大きく深呼吸してあたりの兵士達に一言告げる。
「あんたらに恨みはないっスけど、ちっと寝ててもらうっスよ」
カイムは刀を一本腰のベルトにぶら下げて、もう一本は鞘から抜かず構える。
「捕らえろ!」という掛け声と共に兵士達が一斉にカイムに迫って来た。
今、押収室の中で刀を探しているロロナの邪魔をさせないためにもカイムの背にある扉の中に兵士らを入れるわけにはいかない。
カイムは右足を軸にその場から動かずに兵士の斬撃をものともせず、躱しては打撃を与えていく。
いつのまにか6人の兵士は床に伏せており、兵士は残り1人となっていた。
「くそ、くそ、ここでやらないとあの方に殺される!」
「あの方?よくわかんないっスけど寝ててもらうっスよ」
鳩尾に突きを繰り出し、兵士はそのまま崩れ落ちた。
誰一人命を奪うことなくカイムはその窮地を脱した。
「さて、俺の刀早く探さないと」
カイムが押収室に戻ろうとした矢先。
銃声が響き渡る。
咄嗟に手に持っていた刀を鞘から抜き、銃弾を弾き飛ばす。
しかし、同時に手にした刀の刃が欠けてしまっていた。
「次から次へと面倒っスね」
銃声の聞こえた方向には2人の兵士が銃を構えている。
連射式の銃でないことが幸いした。
カイムは打ち出される銃弾を全て刀で弾き落としていく。
カイムは刀の刃がボロボロになったことを確認すると、刀を捨てて、腰に携えた刀を抜き出す。
「そらよっ!」
鞘を2つ投げつけ兵士達の頭に直撃する。
「あったわよ!これで間違いない!?」
「おお!それだ!」
白い鞘に収まった一本の刀を投げて渡す。
「またゾロゾロと切りがない。せっかく俺の刀見つけてくれたんスからロロナに一つ見せてあげるっスよ」
「えっ?」
「瞬きすんなよ」
カイムは探していた刀を受け取り、抜刀する。
手元で刀をクルクルと回転させ、再び鞘に刀を戻すとカイム達と兵士達の間の天井が崩れ落ちて来た。
「なっ!?」
「どうっスか。凄いっしょ?」
崩れ落ちて来た天井の瓦礫のおかげで通路が塞がったため、兵士達がカイム達のいるところまで辿り着けなくなった。
瓦礫の向こう側では「回り込め!」とか「何とかしてどかせ!」とか、さまざまな声が飛び交っている。
「とりあえず目的のものは回収したし、どこに向かえばいいんスか?」
「城下町にある隠れ家よ。正門の裏道から逃げる手筈になってるわ」
「よし、じゃあとっとと行こうか」
正門へ向かう途中、他の兵士に遭遇する。
カイムはロロナの前に出て白い鞘に入れたままの刀を構える。
「ここは俺に任せてくれていいっスよ」
「捕らえろ!」
兵士達が剣で切り掛かってくる。
果たして本当に捕らえる気はあるのかというくらいの勢いだが
どちらにせよカイムには関係ない。
「えっ」
カイムが刀を一振りするだけで兵士達は文字通り吹き飛んだ。
そのまま壁にぶつかり、次から次へと倒れて行く。
ロロナはその光景をポカンと見つめ、カイムに問う。
「……あなた何者なの?」
「何って言われても、まあ世界で最強の剣士っスから」
カイムは冗談を言うように笑いながら言い、二人は正門へ向かい再び走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます