小人が巨人を倒すには (前編)


「どもです。死霊術師トゥルーヤ、今回の…えーとなに?ジャイアントスネオ?みたいなチームで貢献してこいって団長に言われて来たんで、よろしく」

「いや『GIANT KILLINGジャイアントキリング』な。次間違えたらぶっ飛ばすから気を付けろよ新入りィ」

「うわぁマジでジャイアンみたいなやついるじゃんこわー」

「じゃあテメェがスネオポジションか?オラぶっ飛ばしてやっからこっち来いよ」


「なんで初対面同士で喧嘩になるんだろうなぁ……」

 新たなる任務へ挑むにあたり、集った面子が顔を合わせる。

 こちらはもはやお馴染みとなりつつある面子。俺(と幸)、ヴェリテ、エヴレナ、アル、白埜、シュライティア、、ロマンティカ、ディアン(とリート)、それにエレミア。

 地下探索で行動を共にしていたらしきクラリッサという人物は任務を終えたからなのか他の仕事が詰まっているからなのか、地上に戻り一息入れ次第すぐにセントラルに戻っていった。シャインフリートは米津さんの勢力下で再度動くようだし、シャインフリートに懐いていたトランとかいう子狐もそのまま付いていった。

 それで抜けた穴を埋める為の戦力として〈神託の破壊者〉より人員を回してもらったのだが、何故か昔の不良みたいに絡むアルが速攻でトゥルーヤと険悪になっていた。

「ていうか新入りも何もお前『黒抗兵軍』に加入してないだろ」

 どの組織にも属さないままずっと俺達と別個で動いてたじゃん。

 そう言うと、トゥルーヤにメンチを切っていたアルが反転して人差し指をこちらへ勢いよく突き付ける。人に指を向けるな。

「いいや!そもそもあの軍団の創設者は俺とヴェリテだからな。命名も俺だぞ」

「…………確かに」

 返された言葉にぐうの音も出なくなる。そうなるとあの兵軍のトップってアルになるのか?社長みたいな立ち位置にいるのか?この戦闘狂が。

「そもそもそのチーム名なんだ?初めて聞いたんだけど」

 俺の素朴な疑問にアル以外の全員が頷く。誰も知らないのかよ。

「前回の仕事はなんにも名前決めてなくて勝手に『地下探索組』とか呼ばれてたからよ、今度はちゃんと決めとくかと思ってな」

「『巨人殺し』ってめっちゃ安直じゃんマジでそれで行く気?」

「あァ!?んだ新入り文句あんのかよ『巨神ころしティタノクトノン』でもいいんだぞこっちは!」

 それは魔法使いが英雄に勝つために作ったオリジナル技だから駄目だ。

「いやいいよジャイアントキリングで……今話し合うべきはそんなことじゃなくてさ」

「どうやってあの巨体を打ち倒すか、ですね。あれと比べれば我々は小人に等しい」

 話の本筋を戻してくれたヴェリテに感謝しつつ、誰も進行役がいないのでやむなく俺がそのまま話を進める。

 ちなみに部屋には他にも遥加とマルシャンスもいる。二人もオルロージュ戦からの付き合いだが、今回の話に乗って力を貸してくれることになった。…未だ、伽藍洞のような微笑みを絶やさずに話を(表層上は)楽し気に聞いている遥加も、一年という時を共にした俺にとっては大事な仲間だし強大な戦力だ。

 期待を隠せないし、その無理は絶対に押し通させない。

(まぁ、あのお付きがいればその心配も杞憂だとは思うが)

 仮面に隠れたその美丈夫の頼もしさもよく知っている。この二人の参戦は非常に心強い。

「竜種のブレスでもあの宇宙に届くくらいのデカブツでは流石に通じない。やれるとすればもっと超未来的な兵器が必要になると思う」

 これまで俺達は持ち前の能力、異能を使って全ての事態を攻略してきた。その全てが古来よりある力、あるいは極めて原始的な力だった。

 だが今回はそれも通用しそうにない。となれば必然、頼るべき専門家は限られてくる。

「というわけでその道のスペシャリスト兼エキスパートをお呼びした。先生、どうぞ」

 俺が仰々しく頭を下げて手をドアへ向けると、そこから白いローブ姿の女性人物が現れる。

「どうも、最近が過ぎて引っ張りだこの超天才アンドロイド、みんな大好きシャザラックです。どやぁ」

 口で言って顔でもしっかりドヤ顔を作って、セルロイドの眼鏡を知的にクイッを上げた大先生シャザラックが一礼する。

 その登場に一部の者から歓声が上がる。


「あっ『ビバ(略)』の人だ!」

「目からビーム出すってマジ?サイ〇ロップスじゃんちょっと見せてくれよ!」

「失礼だよディアン、バイザーしてないでしょ!サイクロッ〇スじゃなくてディ〇のスペー〇リパースティン〇ーアイズだよ!」

「オイオイオイオイ!俺の造った剣を改造して零〇斬艦刀みてェにできんのか?それならあんな巨人の足くらい斬り捨てられんのによォ!!」


 一気に騒がしくなった連中がヴェリテ渾身の雷で沈黙させられるまでの間、ずっとシャザラックはご機嫌だったし肝心の巨人攻略の話は一ミリも進まなかった。

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