【禍津雷】 リヒテル


 【名称】厄竜リヒテル

 【種族】疚拭やまぶきの厄竜

 【性別】雄

 【出現場所】???

 【強さ】★★★★★


 【能力】


 ・〝禍津雷マガツイカズチ

 不気味に汚染された黒い轟雷。

 本来の雷竜が放つ雷の数十倍の威力を有し、発生の一瞬を昏い光によって視界全てを覆い尽くす。

 純粋な威力も高いが、この雷は受けることで対象に恐慌状態を引き起こさせる。真っ当な思考を保てなくなり、常に身を這う怖気と底知れない恐怖に身を支配され精神を削られやがて発狂する。

 精神防護の術式や性能があれば抵抗は可能だが、この黒雷は敵の内部にも浸透しそれらの技能をも破壊する。直撃は厳禁だが、昏い光が瞬いた瞬間には既に身を打たれているので、回避は極めて困難。




 ・〝素手喧嘩ステゴロ結界〟

 上記の雷を完全攻略された際に展開する黒雷のドーム。竜状態の自身と相手を取り囲んで充分に広さのある空間を確保する。

 この技を展開後はリヒテルは雷の一切を行わなくなる。が、代わりに敵の異能も使用不能にさせる。もし敵が何らかの異能を行使しようとした際にはドーム全域から棘のように尖った黒雷が自動で対象へ飛来して刺し貫く。喰らうと同時にその異能は破壊される。

 ただし身体の内部のみに作用する力(身体強化、自己治癒能力等)は看過される。




 ・〝竜王の呪縛カリスマ(雷)〟

 黒竜王に仇なす世界の全てを滅ぼすよう入力された最優先事項。リヒテルはこれに遵守した行動を取り、それに従っている内は全パラメーターが最大三段階上がるが、肉体の耐久性を超えた出力に到達してしまう為、最大までギアを上げた場合には自壊を伴う。




 ・概念臓器(心)

 生前最期の闘いで刺し貫かれて潰された心臓を〝絶望〟の一部で強引に再生させたもの。これは竜王が生きている限り再生し、壊されても殺されない。




 ・『雷竜の矜持』

 無理矢理に蘇生させられた上に都合の良いように心身を玩ばれていることに対する憤慨と憤激。

 死して尚肉体を駆動させられ竜王に忠誠を誓わされてもまだ、その最奥にある深層心理は雷鳴の如く瞬き決死の抵抗を見せている。この意地と矜持によって竜王のカリスマが最大限機能せず、パラメーター上昇も二段階止まりになっている。






   『攻略メモ』


 死した雷竜の躰がエッツェルの言葉によって息を吹き返し蘇った姿。人の姿は取れなくなり、穴の空いた竜態の胸部からは不可視の鼓動が鳴り続け、その穴からは汚泥のような黒い瘴気が溢れ出している。これが全身を覆い、金色だった竜の姿は見る影もなくなっている。


 竜王の権能と概念体の汚染強化に一部反抗している節があるが、本来死んで思考能力も意識も全て失った死骸からはそのような確固たる意思が現出するはずもない。竜王はこれを『竜の魂に刻まれた叫び』としているが、彼はこれを消し去るどころか喜んで放逐している。彼にとっては同胞がその陳腐な矜持だけで王に歯向かうその姿が興味深くて仕方ないらしい。


 だが助ける術は無い。体と心は既に滅んだ。たとえエッツェルを倒し操られる肉体を解放しようと、ただの死骸に戻るより他に道は無い。

 それでも。足掻き抗うその勇ましさを誇りとする雷竜は、最後まで竜王の為ではなく己の為に強者との死闘を望む。本来竜王が与えた能力ではない〝素手喧嘩結界〟はそんな彼の生き様を示した抵抗の意思そのものである。

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