〝罪源・世〟の概念体【Fredrick】
『死に至る罪、七つ』
『人の想念、世界を殺す』
『世上は滅び、栄えるは、竜か』
黒い僧衣の上からローブを羽織った、晩年に差し掛かった禿頭の男性姿。
通常の概念体と同じく自らの理を展開するが、他と異なる点は二つ。
一つは範囲。彼は一度展開した罪源領域を最低でも十キロ、最大で百キロに渡り広げてくる。
一つは性能。この概念体は『異常流出』とは違うプロセスを経て呼び出された概念体であり、その弊害か保有する理も本来のものより外れた形となっている。
【septem peccata mortalia】
Fredrick出現時に発生する一定領域を支配する場。それは七つの大罪。とある世界の宗教における、人を罪に導く可能性を孕む欲望や感情。
ただしその性質は現在歪んでいる。
【Politics without Principle】
それは『理念なき政治』。
あらゆる人の望みを否定し、あるいは卑屈に迎合し、世の営みを乱す憤怒の想念。
決して他者を認めず、自分本位な行動思考を持つようになる。当然和解も和睦もありはせず、人間性を失った人々は真っ当な心を無くしてしまう。
【Wealth without Work】
それは『労働なき富』。
儲けられればそれで良い。労働の対価など馬鹿らしい。道徳に外れようと金銭を得ようという怠惰の想念。
労働の義務を放棄し、あらゆる外法でもって金を手に入れようと考える。果ては、殺してでも奪い取る外道の徒として真っ当な人の在り方を棄ててしまう。
【Pleasure without Conscience】
それは『良心なき快楽』。
便利であること、楽しくあること、気持ちよくなることのみを突き詰めた色欲の想念。
脳内の枷は弾け飛び、目先の快楽にのみ飛びつく。獣畜生にも劣る本能の支配。節度を踏み躙り倫理観を嘲笑う、この領域内では薬物乱用も強姦も当たり前の世界として成立するだろう。
【Knowledge without Character】
それは『人格なき学識』。
ありとあらゆる興味の対象を知りたい、骨の髄まで貪りつくしたいという暴食の想念。
自身の好きなもの、好きなことを底なしに突き詰めていく。食であれば胃が破裂するまで、いや食物が腹を突き破ってもなお食べることをやめない。性であれば性交死するまで、踊りであれば力尽きて倒れ死ぬまで決して自分の好きなことを止めようとは思わない。
【Commerce without Morality】
それは『道徳なき商業』。
我が思想こそが絶対。命を投げ打ってでも欲しがって然りべきという傲慢の想念。
求められる為に、求めさせる。たとえば医術に相応の自信があるものは、相手の腕を斬り落としてでも自らの手腕を披露しようと躍起になるだろう。
【Science without Humanity】
それは『人間性なき科学』。
神秘も奇跡も認めない、人の力のみを強く誇示する強欲の想念。
星の寿命を縮めようが、環境汚染が取返しのつかないラインまで到達しようが、人間が真理を探究する為ならば仕方のないこと。人類が発展する為ならば必要な犠牲。
人が繁栄するべくして人の住処を破壊する遠因の自殺衝動。
【Worship without Sacrifice】
それは『献身なき信仰』。
心の拠り所を求め、得るべくを得た純真さをけたたましく非難する嫉妬の想念。
何にも祈らず、しかして祝福だけを強奪しようとする傍若無人さを発揮する。
『攻略メモ』
色々と書きましたが、ようするに『展開するだけで人々が狂い互いに殺し合う地獄を生み出す』領域を持つ概念体、という話。この世の終わり。
おそらく初っ端から全開の百キロ展開を繰り出すだろうことは想像に難くない。もとより竜王(正確には内部に取り込んだ〝絶望〟の概念体)が強引に呼び出した存在であるが為、その行動理論も彼の意識に則ったものとなる。
すなわちが竜以外の生命、その鏖殺。
七つの大罪を司る概念体がこうまで歪んだのも、おそらくはそれに由来しているものと予想される。
展開した領域のどこかには必ずいる。が、自身の弱さを自覚しているのでとにかく逃げる。街中、人混み、建物の中。狂気に侵された人々が殺し合いをしている最中を、普通の人間には認識されない性質を持つFredrickは逃走し続ける。
群がる人間を吹き飛ばし蹴散らしながら進む胆力と外道さがあれば発見も討伐も比較的容易ではある。
また、その特性上『人の性質を宿す者』、『人の魂を宿す者』、『人としての尊厳を持つ者』らは全てこの領域内において例外なく影響下に置かれる。逆にいくら神性があろうと竜種としての格が高かろうとあらゆる耐性を持っていようと上記の属性を有していれば全てが無意味。正真正銘、人の意思などまったく理解しえない純然な神であればようやく無効といったところか。
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