酒喰らいの大鬼(♠)
「オイ」
ベキ、メキ……ガ、キンッ!!
「……非常識にも程があります。ここ異世界ですけど」
無数の星が瞬き、七色の虹が交差し、多数の銀河がひしめく超常時空。
五つの陣営中、もっとも高度で得体の知れない存在の末端に位置するリンドは、自らのプライベートルームたるこの次元に罅を入れて割り込んできた、一本角を額から生やす謎の巨漢に呆れ果てていた。
「おう、テメェが?…あァ、どっかのなんかの一つ所なんだろ。聞いたぜ、なんぞクソ面白ェ祭りを開いてるそうじゃねェか。クカカッ、混ぜろよ」
「
巨大な風船を破裂させたような音が反響し、次元違いの異質を持つリンドの制裁を受けて。
それでも赤髪の鬼はけろりとしていた。何が起きたのかもわからず頭を掻いて。
「何じゃれてんだ小娘。あとで遊んでやっからその遊びにオレも巻き込めって、なァ」
息苦しさを覚えるほどの威圧感圧迫感を放ちながらも、その瞳は爛々と子供のように輝いている。
「…あなたは何者ですか」
「知らねェのか。近頃の若ェのは学が浅くて困るな。史上最大最強の大鬼と謳われるこのオレ様が時代に忘れ去られるとは!」
「っ、ではあなたは大江山の」
「お、なんだよ知ってんじゃねェかそうだよその大鬼様よ」
リンドの観測した他世界の内、およそ上位高位の『神種』と分類される対象の選別はかねてから行ってきていた。これを戦力に加えられることはすなわち勝利への直通になることは間違いなかったから。
しかし神域に座する存在は通常人前には姿を現すことはない。それはリンドの技術を用いてすら邂逅を不可能とするほどに難度の高いものであった。
だが地上に在って神格を宿す存在もごく僅かにだが観測されていた。この漢もその内の一つ。
鬼神。
「強ェのが山と来るんだろ?人間だ、人間がいいな!人と闘うのが一番楽しいからなァ!連中はどの種族より燃える。どの種族よりも高貴で愚昧で、そして尊い。このオレ様が負けた二度も人間だった」
「……仮に、あなたの参加を許可したとして。あなたは私に如何なる益をもたらしてくれるのですか?」
リンドは天秤を計っていた。この鬼神という最強格の存在を、受け入れるか弾き出すか。どちらが我が陣営にとって有益なのか無益なのか。
「あ?」
だが誤った。
「何言ってんだテメェ。オレが出るっつってんだから出るんだよ。今更どの段階の話してんだボンクラ」
直感で理解した。
『これは不味い』と。
「わかりました。では今からこの五つ巴による戦争の概要とルールを説明します。無論のこと、参加する以上はルール、規定に従って行動してもらいます。異論はありませんね?」
今、この場で手綱を握らなければ全てご破算にされる。野放しにするよりかはこちらの方がずっと有益だ。
我らに取り返しのつかない被害を与える前に、こうした方がよほど有益となる。
結果としてリンドの判断は正しかった。
それは五大陣営全てに対する最善の行動であったと言える。
鬼の神格が、王国に降り立つ。目的はただ一つ、唯一の願望を満たす為だけに。
「さァて。強ェのは誰だ、何処だ。楽しませてくれよ?なァ」
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