18 朧とるい、『設定』に溺れる

 ルビノワの話が始まる。

「皆さんこんばんは、ルビノワです。

 では今日のお知らせを。

『幽冥牢小説の魔』に『坩堝るつぼ』の『さん 燦』をアップ致しました。今週も予定通り続きが載せられてホッとしている主殿でした。人生色々。

 今日のお知らせは以上です、と思ったら皆が来ました。主殿もいます。三日来なかっただけなのに何か久々に会った様な気がします。

 はろはろー☆」

 それぞれの用事からすれ違いが生じ、ここ数日、ルビノワは全員の顔をまともに見ていなかったのだ。

「はろはろー☆」

と幽冥牢達も手を振る。

「お知らせが終わったから好きな様に喋って頂戴」

「幽冥牢です。ご無沙汰ー☆」

「朧委員長ですよう☆

 ご主人様、何か

『ご無沙汰』

ってヒワイな響きですねえ☆」

「……まあ、好きにしてくれなさいよ」

 何かに見切りをつけた感じの虚ろな笑みを浮かべる幽冥牢。

「るいです。何かホッと一息つけますね。この場所は。しかも

『ご無沙汰』

なんてセリフを聞くと身体の芯が熱くなりますね。ほほほ」

 袖で口元を覆い、るいが艶やかな微笑を浮かべた。

「そうか。えーと、うん、るいさんも好きにしてくれなさいよ」

 改めて何かに見切りをつけた感じの虚ろな笑みを浮かべる幽冥牢。

「沙衛門だ。しかしそんな状態で最後まで持つのかな? ご両人。何だったらここでたっぷりと念入りに可愛がってあげても俺的にはのーぷろぶれむだが」

「じゃあ、立場的には俺はそれをソファに踏ん反り返って眺める訳ね。猫の頭を撫でつつ

『どう見てもそれジュースだろ!』

という感じの液体を注いだグラスをくゆらしながら」

「ここでやられると凄く困ります。私も抗議の意味で泣いたり喚いたり、ハンカチの端っこを噛んで引っ張ったりしますよ。

 と言いますか、スタジオを何だと思っているんですか、あなた達は」

 ルビノワが嗜めようとしたが、朧の次の言葉がそれを粉砕した。

「謝りますから変な事は控えめにして下さい」

「OKなのかっ!」

「私も朧ちゃんと一緒にこの身を捧げますからどうか穏便にお願いします。もう身体しか捧げる物がないんです。

 ああ、父母が健在なら。よよよ」

「ううっ。るい姉さあん! 私、変な人達に乱暴されるのは嫌だけど姉さんと一緒なら我慢するわ」

「……何だか朧さんとるいさんが姉妹設定らしいですね」

「いい方向に転がる気が微塵も湧いて来ませんね」

 小声で囁き合う幽冥牢とルビノワ。

「朧ちゃん……こんな世の中だけど二人で肩を寄せ合って生きて行きましょうね?」

「ちょっとあなた達?」

「えー、そして俺がそんな姉妹を良い様に弄ぶ富豪の叔父さんだ。ほ、ほれ、これで足りるか?」

 札束をうずくまって抱き合いながら肩を震わせる二人に投げて寄越す沙衛門。叩き付けるというよりは、報酬として寄越した様な

『ぺちっ』

という遠慮がちな音しかしなかった。何故か佇まいがぎこちない。

「ひッ! 姉さん、この人怖い!!」

「ああ、朧ちゃん。状況に関係なくとても素敵な抱き心地だわ。もう離さないわよ」

「何だか私の話を全然聞いていないみたいよ、姉さん」

「一部では姉妹というのはそういうものよ、朧ちゃん」

「日頃どんなメディアに触れているのか非常に気になるけれど分かったわ、姉さん」

「爛れた姉妹なのか……何となくの質問なんですけれど、ルビノワさんは何かでああいう姉妹とか見た事あります?」

「必要以上にそういうのに深入りすると病むので、知り合いにはいませんね」

「おっかないですもんね」

「刺されたり撃たれたりするケースがあるので」

「あー……銃社会は怖いなあ」

 あくまで他人のふりで通したいと態度で示すべく、小声で囁き合う幽冥牢とルビノワ。

「さ、さて今日は何をさせて貰うとするかな。くくく……」

 棒読みぶりも甚だしい沙衛門。悪役は得意ではない模様である。

『実は何をするか考えていないのではないのか?』

という不安さえ見る者に抱かせる顔色の悪さだ。不憫になって来たので、それとなく幽冥牢が

『正直引いてるし、恐れおののいている』

というテイで自分を騙しつつ、沙衛門に声をかけた。しんどい事だが、自分を騙すのは仕事で慣れていたのだ。

「あの……俺も何かしないと駄目なんでしょうか?」

「主殿がこういう汚れ役は率先してすべきだ」

 幽冥牢は先程心配した自分を胸中で瞬殺した。

「無用の長物にも程がありますよね!? 必要なのそれ!?」

「そこまで深刻にならずとも、

『台本付きの小芝居なので気軽に楽しむ』

というテイでいいのではないかと思うのだが……」

 沙衛門の様子と声には、懇願の色が濃く感じられた。

「ああ、そういう事……じゃあ、別にいいのかな?

 えーと……そうねー、だったら俺は

『旦那のいない間に現れる御用聞きの米屋、ゆめやん』

という配役でいいです」

「良くないですっ! 別にバンドとかやる訳じゃないんだからそんなに登場人物がいなくても良いじゃないの!!」

「変な事にはならないらしいので、ルビノワさんもやりません? 楽しそうなんですし」

「幽冥牢さんがあっさり流されたんじゃないですか!」

「ひぃっ、ごめんなさいっ、先生!」

「誰が先生ですか、誰が」

「ルビノワさんですかね?」

「ルビノワさんしかいませんねえ」

「この怖いおじさんに次ぐ第三勢力なんですね、ルビノワさん。怖い……怖いわ……」

「俺の知らない所でつまみ食いとは、ルビノワ殿、何という第三勢力……! 怖い……!!」

「悪役に怖がられる私は何なんだ。いや、その前に、ねえ、その勢力の第二派閥は誰なんですか?」

「あ、俺じゃない?」

 挙手する幽冥牢。

「それとお、私達不幸姉妹しかいないじゃないですかあ、ルビノワさんのうっかりさん☆」

「しかもそう見せかけておいて、ただのお米屋さんと安心して接していたゆめやんにもいい様に貪られるのね。何という恥辱に満ちた生涯なのかしら」

 朧とるいがじれったくも嬉しそうに身を寄せ合いながらよじったのを見て、ルビノワはジト目を向けて訊ねた。

「三すくみですらない様に見えるんだけど……はい、説明希望! 一体どういう設定なんですか?」

 ルビノワが挙手した。

「えーと、何だかるいさんの設定に少し憧れちゃったけど、俺はー……そうね、単刀直入に言いますと

『ゆめやんは米屋のアルバイト中のうっかりさんな学生。

 ある日、本屋でHな本を買おうとした所を見目麗しくも厳しさも忘れない素敵女教師・ルビノワ先生に見咎められ、それ以来色々と彼女と交換条件で動きつつ、言う事を聞かされている、ちょっぴり気弱な26歳』

といった感じですかね?」

「いやいやいやいや、何でそんなスラスラと設定が出て来るんですか!?」

「いやあ、ネットで他の管理人さんにもよく言われます☆」

「褒めてませんから!」

「あうー」

「落ち込まれてもね! と言いますか、26歳でHな本を買う所を見咎められたりしないで下さい! 大人なんだからスタイリッシュにHな本だろうと何だろうと堂々と買えばいいじゃないですか」

「それは……あなたがいたから……」

 何故か秋風に吹かれ、乱れた髪を抑える幽冥牢。落ち葉が舞い、寂しげな雰囲気。

 ルビノワ嬢の眼鏡が激しくずり落ちた。

「訳分かりませんよ、主殿。何時の間にこんなにぶっ壊れておしまいになったのですか?」

「うーん……前からかな?」

「そ、そんなあ……」

 顎に手をやっての幽冥牢の真面目な返答に、ルビノワの疲弊度が増して行く。

「よし、恥辱の時間だ。全員足を開くのだ。

 方法とか考え付かんが、うーん、あれだ、天国と地獄を順繰りに味わわせてくれ、ちゃう」

「考え付かないんだ」

 彼を見上げながら真顔で指摘する幽冥牢。沙衛門の肩がびくっと反応したのを、幽冥牢とルビノワは確かに見た。

「しかも、うーん……悪事、悪事……思い付かぬ! 

 そもそも何もしていない娘に悪事を働くとか頭おかしい……もう、ええい! そうだ!! あのう……さ、撮影などしてくれる……」

「ああ、撮影の辺りが立派に悪事だと思います。悪役らしくなって来ましたね、沙衛門さん」

「そうね、撮影とかはうん、鬼畜だわ。

 沙衛門さん、マジ悪役。怖い感じ、出てますよ!」

「鬼畜でまじな悪役!? うぅ……嫌だ……やりたくない……ひどい……」

 ルビノワと幽冥牢の冷静な指摘並びに役作りへの声援が沙衛門を打ちのめす。彼は懊悩し、苦痛のうめきを漏らした後、こう言った。

「では、撮影はなしで!」

「や、やめちゃった……」

 幽冥牢の驚愕に打ちのめされながらの指摘に、再び沙衛門の肩がビクついた。

「えーと……えーと……ああもう! ほうれ、足を開けい!! 見ないでいてやるから!」

「見ないのかよ!?」

「見ぬ! 朧殿やるいがどうこうではなく、そういう状況下では見たくもない!!

 俺はそういう鬼畜の成す意地悪は嫌いなのだ!!」

「札束投げてたじゃないすか……」

「あれも耐え難いのだ! 金を投げるとかたわけ者の所業としか呼べぬ!!

 しかも何もしてない娘に叩き付けるとか、何を考えて生きているのか想像はつくが耐え難い! 金を稼ぐのがどれ程大変な事か分からぬ阿呆のそれよ!

 あ、頭おかしいとしか思えぬ!!」

 魂の叫び。

 沙衛門には悪役はやはり無理な様だった。パッと見た感じでは天下御免の風来坊的な雰囲気しかないのだが、内なる彼はやはり気が引けるのかもしれない。

(すれた感じはあるものの、彼もまた、どうにかこうにか生き辛い世界を生き延びて来た、基本的な良識を持つ人物なのだ)

と思うと、幽冥牢とルビノワの目頭が熱くなった。

 なのに、なのに何でこうなった。

「きゃああっ、姉さんっ! 姉さああああああん!!」

「あああ……どなたか、どなたか朧ちゃんをお助け下さい……!」

 沙衛門にメイド服のエプロンの帯をちょいっと、かなり遠慮気味につままれただけの朧と、台車にうつ伏せに乗り、自分から片手を朧に向かって伸ばしながらもう一方の片手で床を押し、

『引き裂かれる二人』

という事なのか、ガラガラと音を立てつつ、後ろへ後ろへと遠ざかって行くるい。

「続くのか……ほ、ほれ、この隠れキリシタンめ。

 そうれ、ほっぺをつまんでくれる。忍びの怖さを思い知るが良いわ済まぬ、朧殿、痛くしないので、朧殿、絶対に痛くしたりとかしないので、頼むから嫌わないでくれぇ……」

「内包した人格同士で争う二重人格キャラみたいになっとる……!」

「沙衛門さん、魅せますね……!」

 幽冥牢とルビノワが熱く拳を握りながら見入りかけてコメントまでしてから、はっと我に返った。

 しかも

『ほっぺをつまむ』

と言い放った沙衛門だが、その実、朧の頬に触れる直前で激しくその手が、目に見えて震えていた。

 触れる触れない以前に彼の良心がそれを許さないのだろう。

 それにも構わず

「ひぃ~☆」

と楽しげに朧が悲鳴を上げる為、

『抜けると後で壮絶ないじめが待っているつまらないグループの飲み会』

の様な雰囲気がひしひしと幽冥牢とルビノワには感じられた。いたたまれない気分で一杯だ。

「何? このいじめ……」

「あの……俺、思うんですけど、沙衛門さん、もうやめていいんじゃないっすかね?」

「やめたい……」

 ここまで絶望に満ちた沙衛門の言葉を聞いたのは初めてだった。気まずい。

 が、朧とるいは知らん顔である。むごい。

「あああ、そんな事をされたらおかしくなってしまいますう! 姉さん! 姉さああああん!!

 私が私じゃなくなっちゃうううううううううううううううう!」

 全くのノーダメージながら、朧が悲鳴を上げるので、沙衛門が泣きそうな顔で付き合う。

「ぐぬぬ……!

 そ、そうさなあ、えーと……日記とか出すが良い。とても頭が悪そうに所々つっかえつっかえしつつ、朗読してくれる」

「それは本気でやめてえええええええええええええぇ!」

「あのう、ほっぺつねろうとしたり、かと思えば人の日記音読とか、悪事の大小の振れ幅が酷くない!?」

「な……しくじったか!?」

 狼狽する幽冥牢、そして沙衛門の驚愕の表情に、ルビノワが眉間にしわを寄せ、告げた。

「分かった……! 沙衛門さん、悪事を日頃考えないから、程度が分からないんだわ……!!」

「なるほど、それは俺も意地悪とか嫌いだし、したくないのでよく分からないです!」

「ああ、だから主殿は時々滅茶苦茶酷いんですね」

「ぐはっ!? ふええ、ルビノワさん、本当にごめんなさい!

 ねえ、皆もさあ、誰も幸せにならない小芝居、もうやめよ!?」

 ルビノワにぺこぺこ頭を下げてから、朧達を見やって幽冥牢が喚いた。が、

「朧ちゃーん!」

と叫びながら、景気良く先程の台車にうつ伏せに載りながら、飛んでいる宇宙警備隊員の一族風のポーズのままこちらへ突っ込んで来るるい。

 しかも彼女は沙衛門の足に頭をぶつけて止まり、

「う」

と一言言ったきりくたっと伏してしまった。

 手を宙にさまよわせ、額に脂汗を滲ませ、かたかたと震えながら、沙衛門が自信なさげに罵倒する。

「ふん。し、死におった。

 売り飛ばせば幾ばくの金にはなったものを。ははは役立たずめそんな事はないので! るい、そんな事は絶対にないので!!」

「もう悪党ですらなくなってるんですけど!」

 ルビノワの叫びさえ朧とるいには届かない。何かそこまで沙衛門がされなければならない理由があるとしたのなら、とことんまで説明を求めたい光景だった。

 しかもこの様子だとどうせ朧の悪乗りにるいも興が乗ってしまったか何かで、糾明すべきあれこれなど、多分何もないのだ。

「くうう、殺したわね? 姉さんの仇っ!! 委員長チョップチョップ」

 ぴしぴしと沙衛門の頭に適当なチョップを繰り出す朧。

「ぐわー。内臓破裂ー。おかあさーん!」

 膝から崩れ、ゆっくりと地に伏す沙衛門。その表情は幽冥牢とルビノワの予想通り、とても穏やかであった。

「俺には悪党は出来なかった……くたびれ果てたので他を探して欲しい。ごめんなさい……」

「な、何と……!」

 思わずうめく幽冥牢。かつて登場からラストまで、ここまで自身の中で揺れまくる悪役を、幽冥牢は見た事はなかった。

「死の淵でお母さんに謝っとる……! 結局何もしてないのに……!!」

「向いてなかったんですよ、沙衛門さんにはやっぱり。可哀想……」

「沙衛門さん、今日はもう、休んでいいからね?」

「あ、締めの挨拶をすっかり忘れてたわ!

 ルビノワがお送りしました。ごきげんよう」

「はい、終わり終わりっ! お疲れ様でした!!」

 幽冥牢が両手で大きく×を出すと、ルビノワと共に沙衛門に歩み寄り、助け起こす。幽冥牢が呼びかけた。

「沙衛門さん、しっかり! もう身体に悪い悪役とかしないでいいんですよ!!」

 ルビノワの膝枕に頭を預け、沙衛門がゆっくりと目を開くと、誰にともなく問う。

「俺は……もう、許されたのか……?」

「いやあ、許すも何も、どう見ても沙衛門さんは徹頭徹尾傀儡でしたから、そこは気にしなくていいと思います」

 ルビノワは悪気の欠片もなく言ったのだが、それが彼の生き甲斐とも呼べる、職業的な存在意義を木っ端微塵に弾き飛ばしてしまった。

 悪役のひとつもこなせずに何が忍びか。そういう点で、今回沙衛門はとことん役立たずの烙印を押されたに等しかったのだから、ひとたまりもない。

「かい、らい……!?

 ぐふっ……」

「あ、いえ、嫌だ、あたしったら! 沙衛門さん、そういう意味では!!」

「うをををぃ、沙衛門さーん! しっかりしてくれー!!」

「えーと……大丈夫です、主殿。息はあります!

 沙衛門さん、いいですか、考えちゃ駄目です! ゆっくり呼吸だけして!!」

 がっくりと首を垂れた沙衛門をどうにか仰向けに横たわらせ、幽冥牢と、傭兵時代の救命経験からルビノワが彼の気道を確保しながら呼びかけていると。

「いやあ、涙が止まらない展開でしたねえ」

 ほかほかのおしぼりで汗を拭いながら、朧が歩み寄って来た。何と清々しい笑顔だろう。それが今の幽冥牢とルビノワには途方もなく忌々しかった。

「お肌つやつやしてくれちゃってるけれど、朧さんにそれを言う権利はないと、俺は思うんですよ」

「いい汗がかけた。

『それが沙衛門さんが全力で、私達にしてくれた事なんだ』

と、私は思いたいです。ぐすっ」

「ヒーローインタビューか何かか朧さんの阿呆ーッ!」

 感涙に咽ぶ朧に、声もかれよとばかりに幽冥牢がシャウトした。

 るいも同じ様に、ほかほかお絞りの恩恵でこれまたお肌つやつやになりながら、問いかけた。

「ルビノワさん、沙衛門さんは輝いていましたよね……?」

「輝き……いえ、別の意味で私は心を抉られました」

「いつか……いつかルビノワさんが、この事を思い出して、分かってくれたなら、私はそれで構いません……!」

「『クスッ、物分りの悪いひとね☆』

みたいに言うのやめて下さい!」

「でもルビノワさんのそういう所もとてもいいなと思います」

「人でなしだ……人でなしが二人もいる……! 怖い~……!!」

「ルビノワさん、もう怖くて人として駄目な感じの人達はほっといて、沙衛門さんを何とかせにゃ!」

「そうでしたね! 息はあるから寝かせておけば多分……主殿、スポーツドリンクとかありましたっけ?」

「冷蔵庫にあったね! よっしゃ、俺、ちょっくら取りに行って参りま、」

「さて、皆で沙衛門さんを寝かし付けたら、次はルビノワさんで行ってみましょうかあ!」

「……は?」

 ルビノワがゆっくりと朧を振り返り、るいは、あら、と呟きながら、繰り出されるであろう攻撃の圏外を見極め、そそくさと一歩引いた。

「ちょ、皆、やめ……」




 幽冥牢の呼びかけがかき消されると同時にスタジオから物凄い怒号と悲鳴が轟き、ひとしきり破壊音がして、それっきり静かになってしまった。

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