第5話 過去と今


ガン!!!



鉄同士がぶつかり合う音。



ヤァァァァ!!



訓練生達の気合いの叫び。






ここは、ペトラ国の兵士学校だ。

ペトラ国の兵士を目指してる者達が訓練や勉学に励む。


俺、フルークもここの訓練生だ。




「行くぜ!フルーク!」



そう言って鉄の剣を握り突進してきたのは、ロビン。


兵士学校に入ってから出会った友達だ。


最近はよくこいつと訓練をする。



ガン!!!



俺も鉄の剣で、ロビンの剣に対抗する。


…重い。


こいつの剣はすごく重い。


ロビンが強いおかげで、相手の俺もぐんぐん強くなっていった。








休暇の日、草原でロビンはこういった。


「フルークは、ここを卒業したら何になるんだ?」


ああ、そういえばこんな話、したことが無かった。


国内を守る兵士か、国外で戦う兵士か。




「俺はこの国を守りたいから、国外で戦いたいな」




俺は誇らしげに言った。


俺はペトラ国が大好きで、心の底から守りたいと思っていた。



「そうか。お前はすごいな…」



ロビンはその場に寝っ転がる。



「俺の母さん病気でさ、どうにか俺が稼いで治してやらなきゃいけないんだよ。父さんはもう死んじまったし」



そう語るロビンの目は、悲しそうで、辛そうだった。



「だからさ、俺は仕事がたくさんあって沢山稼げる国内の兵士にしようと思うんだ。」



「お前の方がすごいよ」


俺はロビンにそういった。


「母親のためにそこまで頑張れるなんてカッコよすぎるぜ」



「はは…そうかな」



なんか嬉しくなさそうに、ロビンは笑う。

せっかく褒めてやったのに。


褒めて欲しくて言ったんじゃないってことくらい分かってるけど。



「でもさ!」


ロビンは起き上がりながら、大きな声を出す。



「お互い、大切なもん守れるようにがんばろうぜ!」



ニカッと笑い、俺の方に手を置いてくるロビン。

イケメンです。



「おう!!」




俺も笑う。






ーーーーー

ーーーー

ーーー

ーー






俺に刺されたロビンは、その場に座り込んだ。


「フルーク…どうしてだよ…」



ロビンの目からボタボタ涙があふれる。



「裏切り者…」



ロビンは厳しい目で俺を睨む。



……どうすれば…どうすればいいんだよ


こんなはずじゃないのに…


こんなはずじゃ…


こんな悲しい思いをするはずじゃ…なかった…のに。















その時俺はハッとした。


もしも、今刺した門番がロビンじゃなかったとしても悲しむやつは、いる。


どの兵士にも家族がいて、友達がいる。


同じだ。


これから王を殺し、ゾンビの存在を失くしたとしても、ゾンビを使う戦争を支持していた者達はがっかりする。





しょうがないんだ。


犠牲は…必要なんだ。





その時俺の中で、やっと覚悟が決まった気がした。



「ロビン聞いてくれ。……俺はゾンビ製造を止めるために、戦うことを決めたんだ。」



「どういう…ことだよ?」



ロビンは、唖然としている。



「ゾンビは…生きた人間から製造され、不必要になったら爆破される。こんなのおかしいと思うんだ」



「でもそれのおかげで……ペトラ国は他国の襲撃を退けてこられたんだろ…?」



「それはそうだ……。でも、人が…使い捨ての道具みたいに使われる国は、変えないといけない…と思う」



「はぁ…」



俺が、国を裏切る理由を語るとロビンはため息をついた。



「お前は…訓練生の時からデカい事ばっかり言うやつだったな…。国を守るとか…」



ロビンはその場に寝っ転がった。



「お前が正しいと思うなら、それをやり通せば……いいと、思う…」




ロビンはポケットからひとつの鍵を取り出した。


門の鍵だ。



「正直、俺もゾンビ製造には反対なんだ…。」



ロビンは俺に鍵を渡す。




「お前ならやってくれるって信じてるぜ」




そう言って、ロビンは目を閉じた。




「おい、ロビン!!しっかりしろ!」



俺はロビンを揺さぶるが、返事をしない。



なんとか気持ちを落ち着かせようと深呼吸を何回もする。


しかし、息が荒くなるだけだった。



「おい…ロビン…死ぬな…よ…」







▶▶▶▶▶▶▶▶





どうやら…フルークさんの方は最悪の展開になってしまったようです。



私が兵士を全員倒した後、フルークに近づくと目を閉じた兵士を抱え、泣いていました。



手には鍵を持っています。




「フルークさん…」




かける言葉が見つかりません。


記憶があれば…経験があれば…なにか思いつく言葉があったのでしょうか。




車で運搬されていた時と同じです…。

その時も私は、絶望する人々に声をかけれませんでした。




無力な自分が嫌になります。




しかし、ヘコんでる暇はありませんでした。




「逃がさん…」



私が最初に蹴り飛ばした兵士が起き上がりました。



私はフルークさんを持ち上げ、走ります。



「ま、待ってくれ!ロビンが!」




「今、ロビンさんの所に戻ったらロビンさんの受けた傷は無駄になってしまいます!!」



そう言って私は、フルークさんの手から鍵を取って門を開けました。



兵士の人が追いついてきたので、フルークさんを門の中に投げ入れ、兵士を人をもう一度蹴り飛ばします。



兵士の人はバタッと倒れ、もう起き上がってきません。


他の兵士が来る前に、私も門の内側に入り、門を閉めます。



門を閉めると、静かになりました。


私とフルークの息の音だけが聞こえます。








とりあえず…山場は超えました…。


気づけば、日は落ち、月が出ていました。




とっても、綺麗な…丸い月が出ていました。

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