エピローグ 明日

時刻は22時を回った。私は、部屋の照明を消してベッドに入る。




明日は、文化祭。


私が手がける脚本は、クラス全員が、圧倒されているようだった。


そして、その通りで、私は、今までにないくらい持て囃された。


伏見ソウシが、もし世間に存在を見せたら、学校の外の人たちもクラスの人たちと同じようにどよめいて、圧倒されるのだろうか。


私は、確かに嬉しかったし、明日は私のシナリオを作り上げるために頑張ってくれたみんなを信じるだけだ。そして、作家デビューしたときと同じくらい、『アサシンガール』が大ヒットしたときと同じくらいに心が躍っていた。



しかし。




私は、1つだけ許せないことがあった。



それは、しごく理不尽だと、重々承知している。

でも、この気持ちは衝動にも近く、とても理性で制することの出来ないものだった。



なんで、私じゃないんだろう。


あの子と違って、あんなにも近くにいたのに。


あの子なんかより、本やアニメが大好きで、彼とも話が合うはずなのに。


私といた方が、彼は幸せになれるはず。



なんて身勝手な考えなんだろう。


でも、心がそう思ってしまうから仕方がない。




まだ、『呪い殺す』ことができるなら…。



私は、もう殺すしかない。



あの人を。



殺せなかったら…。




私は死ぬ。



暗闇で目視できない左腕を折りたたんで、明かりがあったら手首が見える位置に、顔の前に掲げる。

このか弱い手首。そこに血液を走らせる、青い管。これを切り裂く。


怖気づいて、できないと、思ってるでしょ?

その時は、私自身を『呪い殺す』。そうすればいい。

簡単に、死ねる。



さあ。


どっちが死ぬか。




運命は、明日に委ねる。









『魔法使いと、魔女と丘』


–完−

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