第73話 拒絶する
9月の中頃。僕は、誕生日を迎えた。
18歳の。
『能力が使えるのは17歳まで』
リュウに言われて初めて知った、もう1つの『条件』。にわかに信じることが出来なかった僕は、18歳になり、片岡さんとの別れを『拒絶』出来なかったことで、それを信じた。
中学時代、樽本さんの一件から、不登校を繰り返し、ついには勉強について行けなかった僕は、中学3年生を2回過ごした。
『亀井が余ったから、白川、松本のペアで3人でやってくれ』
体育の時間、ペアを組むとき、僕だけが余ってしまうのは、なにも僕が根暗で引っ込み思案という理由だけではないだろう。『本来ならば先輩だったはずの人間』には、多少なりとも気まずさはあるはずだ。
年齢は先輩だけど、学年が同じなんだから、みんなとのパワーバランスなんて、もうほとんどない。
鈴井くんグループは、気を使って僕を誘おうとした。親睦を深めるためか、メールを見ている僕に「コレですか」と小指を立てたりしたことを思い出す。
『最初は敬語の彼だったが、次第にタメ口まじりの敬語、ついにはタメ口だけで話してくれるようになった。』
雨の日の体育館で出会い、藤田くんと話し始めた時期。礼儀正しい彼女。僕が、タメ口でいいと言っても、なかなか
敬語を止めなかった。本当に、律儀で優しい子だ。
リュウに初めて会った時の呼び方は、『時末さん』。
当たり前だ。僕の同級生で、先輩なんだから。
そして、志保の『チカラ』の適用範囲は、『3年以内の年齢差』。
僕の『チカラ』を僕以上に『知る』、あいつが言うんだから、間違いはないだろう。
僕たち2人が、あの丘で出会ったのは、僕が17歳、志保は13歳。
だから、彼女は僕を『魅了』出来なかった。
「僕は、大好きだよ、志保」
他に誰もいない、静寂を極める夕陽の中で、彼女の手を握りしめる。
僕は彼女のことが本気で好きだった。
『チカラ』による『魅了』じゃなくて、彼女の心で。
僕は、彼女に魅了されたんだ。
そして僕は…
別れを、拒絶する。
これからも、ずっと一緒にいたい。
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