第64話 余計

僕の誕生日まであと3日。


学校帰りに、リュウと藤田くんと3人で、ゲームをした。もちろん、藤田くんの家で。


ゲームの電源をつけてロードをしている時に、リュウが口を開いた。


「やっぱ、コレに祝ってもらうんか? ん?」


小指を立てて、僕の方をニヤニヤと見つめる。十中八九、リュウは誕生日の話題で片岡さんのことを出すだろうなと思っていたから、驚かなかったし、むしろ順当すぎて呆れた。


「また1つ大人になるんだなあ、サトシも。 女に祝ってもらえるなんて、お前にとっては一生に一度かも知んねえなっ!」


「うるっさいなあ」と、本当に鬱陶しそうに振る舞う僕にお構いなく、僕を茶化し続ける。


まあでも、こいつなりに僕のことを祝ってくれてるんだろうな、とも思った。何かを心配しているようでもある。


「ちゃんとお返ししろよ〜。女の子はそういうところ気にするからなあ。志保ちゃんは、誕生日いつだっけ?」


「分かってるよ。いちいちうるさいなあ。片岡さんは確か、3月の23日」


ていうか、まともに話したこともないくせに、気安く『志保ちゃん』って呼ぶな。僕だってまだ苗字でしか呼んだことないのに。


「出会ってから誕生日が遠いなんて、お前ホント、ついてねえな」


容赦のない非難だが、これには何も言えなくなる。確かに、その通りだ。


「でも、祝う日が遠い分だけ、気持ちが強くなると思うし、出会ってすぐより、出会っていろんなことがあった後の方が、すごく意味のあるものになると思うよ! だから、彼女さんが、羨ましいよ…」


藤田くんが僕を励ますようにそう言った。


藤田くんは人間じゃなくて、仏とか天使のような類じゃないのか。彼女には良い意味でいつも驚かされる。言葉の最後が、どこか寂しげだったのは気のせいかな。


「まあ、それもそうだな」


リュウも虚を衝かれたように、藤田くんをみた。


すると、突然彼は僕を見て言った。


「じゃあ、その次の日は空けとけよ! サトシの誕生日は土曜日! ってことは次の日曜日は俺たちと遊べ!」


リュウが決定事項のように話す。僕も異論はない。だって、このメンバーは楽しいから。こいつはちょっとだけムカつくけど。


あっ、と付け加える。



何かまた、余計なことを言いそうな、悪い顔。



「お泊まりするつもりなら、俺たちは止めねえよ? 2人っきりであんなことやこんなこと、思う存分やってこい!」


「はっ! はぁぁ!?!?」


やっぱりだ!


こいつは余計なことを言わないと死ぬ生き物なのかっていうくらいの頻度で、また余計なことををを!!!!


心臓がバクバク、2人に聞こえるくらいの勢いで胸を打った。


藤田くんも、こういう話に慣れていないからか、当の僕と同様、落ち着かない様子だった。


この間みたいに顔が真っ赤だ。きっと今の僕も、こんな色をしているんだろうな。


「お、おまっ、お前なあ!!!」


「ははは、お前ら、マジで純粋すぎだろ! 腹いてええ!」



リュウのバカ!


こいつ、ホンッッッット、ムカつく!!!

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