第57話 希望
彼にも、特別な『チカラ』があったらしい。
あの豚に告られた話を公園でした時に、『条件』という言葉に反応した。
もし、私のように何らかの能力があるのなら、『条件』というものがあるはずだ。
だから聞いてみた。「やっぱり、条件が揃ったから、なの?」と。
彼は、条件が揃えば、何でも『拒絶』出来るみたいだ。3時間前の予測と、100%の拒絶の意識。
その証拠に、日曜日のデートが中止。前日の快晴という天気予報を、嵐のような天候でことごとく打ち砕いた。
私と同じ、特別な、『チカラ』。
最初は、半信半疑だったから、匙を投げてみた。
告白された事情を話した金曜日、彼の鞄からこっそり奪った二冊の本。表紙には、現実離れした大きな両目をした女の子が銃を持っている絵が描かれている、簡単に言えば、オタク系とか萌え系みたいなやつ。
私の中学にもいる、根暗な奴らがいつも読んでいそうな本。
これをバラす、という脅しは、思った以上に効果覿面だった。
やっぱり、こういうイラストは、高校生にとっても「恥ずかしい」ものとして扱われるんだな。
3時間以上先の、翌日の漢字テストと、バラされる恐怖による100%の意思。
証明してよ。
『条件』は揃ったよ。
私は、期待していた。
彼なら、今までのようなつまらない日常を、非日常へと昇華させてくれるんじゃないか。
私と同じく、『チカラ』を持っているのなら、それを持っているものとしての優越感や、それがあるからこその不都合だとか、理不尽だとか、そういうものを全て分かち合えるんじゃないか。
だから、裏切らないで欲しい。あなたは、私の希望になるかもしれないから。
次の日。
漢字テストは中止になったことで、確信した。
彼は、私と同じく、特別な『チカラ』を持っている。それも、私なんかよりずっと有用なものを。
そして。
そんな彼を、私は手に入れたいと思った。
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