第39話 嫌な予感

リュウからの着信が来たのは、晩ご飯を食べてから1時間ほど経った頃だった。


さっきの帰りがけに聞いた藤田くんの『チカラ』。その『チカラ』の内容を聞いた日にかかる、リュウの着信。


嫌な予感がしていた。


「サトちゃんが…」


予感は的中したようだ。



藤田くんの能力は、簡単に言えば、死んで欲しい人間を『呪い殺す』能力。100%の殺意を、対象となる相手に注ぐことで、その相手を事故死、病死、または彼女以外の誰かによる他殺に陥れることが出来る。



彼女が、たった今、その『チカラ』を発動してしまった。



リュウは、声を聞いた能力者の『チカラ』を『知る』ことが出来る。そして、発動したタイミングを把握できる。


さらに、これは、さっき初めて知ったことだが、能力者が『チカラ』を使う対象も『知る』ことが出来るみたいだ。


樽本さんのことも分かった上で、今まで僕に声をかけて来たのか。何事も無かったように振舞ってくれるのは嬉しいが、それでもなんか複雑だ。


僕の話はどうでもいい。重要なのは、彼女が『呪い殺す』相手だ。


その相手は…。



リュウの話によると、その『チカラ』で、相手を殺せるのは発動してから1時間後。そして、僕の『チカラ』は3時間前に予測できなければ発動できない。


突然、身体が勝手に、動き出した。衝動にも近い、居ても立っても居られない、そんな具合に。



僕は、寝間着姿でそのまま玄関を飛び出し、自転車の鍵を開けて、ペダルを踏み込む。



間に合う…、間に合うはずだ…!



このままだと、彼女の父親が…。



死ぬ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る