第27話 友達

月曜日。


5限目が学年全体の身なり検査になり、生徒たちが体育館に収納されて、髪や顔を先生という生物にじろじろと見られる。


進学校であるうちは、かなり厳しいと思いきや、髪を染めたり、眉毛を剃りすぎたりしない限りは検査には引っかからず、男子でも耳の上半分を覆う長さでギリギリ許されるのだ。


勉強はキツイけど、身なりは少しだけ自由なところがいい。ホント、進学校だけあって勉強はキツイけど。


検査が少し緩くても、昨日会ったリュウの金髪は、確実にアウトだな。


昨日、彼に会ったことを思い出す。僕がやったことを知っていながらも、僕が気付いていることを分かっているはずなのに、それを嫌味のように隠すふりをして、反応を楽しんでいる。


挙げ句の果てに『親友』と呼んだ、リュウ。


昨日はずっとそのことでムカついていた。


そして、SNSの連絡先も交換してしまったから、メッセージが頻繁に来る。


うざいと思ったけど、無視はさすがに良くないし次もバッタリ会うことを考えると、返さざるを得なかった。


『拒絶』したいけど、向こうは発動するタイミングを正確に『知る』から、発動したくない。自分の行動が全て読まれるようで、なんか癪だから。



あんなやつ、もう親友なんかじゃない。


それに今は、大親友候補の藤田くんがいるし。


彼とは、片岡さんの3倍くらいはメッセージのやり取りをするくらい、学校の外でも頻繁に絡んでいた。


僕と同じく校則ギリギリ、髪が、耳の上半分を覆うくらいの藤田くん。



そういえば、藤田くんもここにいるんだよな、と思い、藤田くんのいる1組の方を見る。

僕は6組だから、距離がなかなか遠くて、見つけ出せなかった。


僕の番になって、次は切ってこいよ、と言われた。



火曜日。


今日は藤田くんとご飯!

この曜日と木曜日は、学校が楽しくなる。


最近なにしてたか、とか、ゲームの話とかを、教室で弁当を突きながら、いつものように楽しく会話した。


「亀井くん」


彼が、あらたまって僕の名前を呼ぶ。


「ん?」と答える僕。


「おととい、『ドラゴンブレードⅣ』買ったから、今日、うちでやらない?」


「えっ…」


ドラゴンブレード。と聞くと、どうしてもリュウのことを思い出す。夏休みは朝から夕方まであいつの家にいて、夜遅くまで遊んだ日は、気の強いあいつの姉ちゃんに怒られたっけ。


そんなことはどうでも良くて、あのゲームは名前を聞くだけであいつを思い出すから、あいつのことをいろいろ思い出してちょっとムカついて来る。


だから、Ⅲが発売されても、僕は手を出していなかった。


「い、嫌なら、全然大丈夫だから!」


僕の顔がよっぽど険しかったのか、藤田くんは慌てた様子で、全力で気遣う。


「そんなことないよ!嬉しすぎて、驚いてただけ。ありがとう。」


藤田くんに対して、そんな顔しないよ!伝われ、この気持ち!!


「ホント?よかった…」


彼は、照れ臭そうに頭を掻く。僕も、友達に誘われるのは久しぶりだから、とても嬉しかった。



「じゃあ、17時半くらいに学校近くの河川敷に来てもらっていい?」


「オッケー!ホント、楽しみ!」





『今日は友達の家に遊びに行く!』


彼が、自分の教室へ帰った後、さっそく片岡さんにメッセージを送った。


『よかったじゃん、楽しんで!』


返信が早いことに、顔が綻んでしまう。


友人がいて、恋人もいて、数ヶ月前までの孤独な日々が、まるで嘘みたいだった。



こんな毎日が、いつまでも続いたらいいな。

そう思った。

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