第26話 ふざけんな
卒業式の日。
進学校に行く僕と、工業高校に進むリュウは、今日をもって離れた。
とは言っても、3年生の教室も同じクラスだったにも関わらず、最後の1年間で数えるほどしか会話をしなかった僕たちは、とっくに離れていたも同然だった。
能力が全てお見通しだとわかった日から、彼を敬遠し続けた。
校庭で、後輩たちに囲まれながらマンガやドラマでよく見かけるような祝福の胴上げをされるリュウ。
周りに人の気配など全くなく、ただ、リュウに纏う人だかりを眺める僕。
違っていたんだ。
もともと、こうあるべきだったんだ。
彼のような、みんなが必要としている、人望の厚い明るい人間と、僕のような、いてもいなくても良いような、影の薄い人間。
これが普通。
僕たちは、交わらないのが普通なんだ。
高校も違う、通学路も全く違うから、次に会うとしてもせいぜい成人式程度。その成人式だって面と向かって話すわけじゃなくて、互いに目を合わせないよう、遠くから見て、こんなヤツいたな、くらいの関係になる。
はずだった。
雨が完全に止んだようだ。片岡さんと入った傘を畳んでも良いはずだが、僕も彼女もお互い驚いていて、それどころじゃなかった。
どうやらこいつは晴れ男らしい。さっきの天候が嘘みたいに、雲の切れ間から眩しい光が差し込んだ。
「呼んでもなかなか気付いてくんねえから、忘れられてるかと思った!前からスカしたところあったもんなぁ、サトシは」
「あの、どちら様、ですか…?」
何も言えない僕に代わって、片岡さんが尋ねる。
すると、リュウがニカっと笑って答えた。
「どちら様って…。俺は、サトシの親友だっ!」
親友…。
ふざけんな。
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