第15話 台無し
僕は、自分の都合で、人の人生を台無しにしてしまった。
たかが、ほんの数ヶ月間女の子に茶化されたくらいで、その人に一生分の傷を負わせてしまった。
樽本さんが入院している間は、お見舞いに行くことが一度もできなかった。退院してからも、もう彼女とは帰ってないし、会ってもいなかった。
怖かった。
僕が、彼女の人生を台無しにしたから。
走ることを失った彼女はきっと、誰にぶつけたらいいのか分からない、ぶつけようのない怒りをずっと持ち続けている。もし僕が、打ち明けて、彼女がこのチカラを信じてくれたなら、僕にいくらでも怒りをぶつけられる。きっと彼女は、事故にあった不注意な自分を今でも呪い続けている。彼女にとってそれは『事件』ではなく、『事故』なんだ。
僕が正直に言わなかったせいで。
それから僕は、その責任を取るように陸上部を辞めた。もともと補欠だったから辞めても迷惑かからないし、「キツかったから」という理由で簡単に止めることができた。部活を辞めたことなんて、何の贖罪にもならないだろうけど。
クラスの人と接することも止めた。また誰かを傷つけるくらいなら、自分から人との関わりを絶つ。
活発で、積極的で、男子から人気のある女子は苦手だ。僕が『拒絶』して、不幸にさせてしまうから、もう関わりたくない。
だから僕は、人との交わりを、チカラを使った『拒絶』、ではなく、拒絶する。
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