08、
へたくそな字で、『偽物いろは歌』を書いた。書道の授業中。
『偽物いろは歌』は「ん」まで入ったいろは歌で、私たちが日ごろ親しんでいる「いろはにほへと ちりぬるを…」というのとは、違う。私はそれを『偽物いろは歌』と勝手に呼んでいる。
とりなくこゑす ゆめさませ
みよあけわたる ひんかしを
そらいろはえて おきつへに
ほふねむれゐぬ もやのうち
私は『偽物いろは歌』の「ね」と書かなければいけないところに、勢いよく「れ」と書いた。仕方がないので、「れ」のところを「ね」に変えた。「ね」のカーブのところが墨が少なくなって、かすれた。筆もくるんと一緒にカーブしてそのままのカタチになっている。
とりなくこゑす ゆめさませ
みよあけわたる ひんかしを
そらいろはえて おきつへに
ほふれむねゐぬ もやのうち
分からないだろうと思ってこのまま、提出したら、ひょろんとした字で、「れ」と「ね」に丸をつけられ「ちがう」と書かれた。
分かっている。
私は、やっぱりいろは歌は、いろはにほへと…が好きだなと思う。手は、相変わらずぶるぶる震えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます