04、
「詳しい説明は、この紙に書いてありますから、よく見てくださいね」
アレジオン錠20、セフゾンカプセル、ラミシールクリーム。
カタカナは、苦手だ。
「アレジオン錠は、アレルギー疾患のためのお薬ですね。それから、セフゾンっていうのは抗生物質です。クリームは、ちょっとずつ綿棒で塗ってください」
よく分からない名前の薬を大量にもらう。よく考えてみれば、恐ろしい。アレジオン錠なんて初めて聞く名前だし、私にはそれがほんとうにアレジオン錠なのかも分からない。どのように体に作用していくのか、どのくらい危険をはらんだものなのか、私には何一つ分からない。分からないのに、私は調べようとも思わない。専門の人に任せておけば安心。先生の言うとおりにしておけば大丈夫と疑いもしない。
もらった説明書は、とっても小さな紙だった。
― ラミシールクリーム。主に、水虫などに処方される薬。
水虫。
また、なんとも言えない気分になってしまう。
私は、お礼を言って薬局を後にする。自動ドアをくぐって、もうぶかぶかでもなんでもないスリッパを脱ぎ捨てる。ぶかぶかではないのだけれど、スリッパというのは不思議だ。
左足右足左足右足左足…と靴箱に並んでいるけれど実際、右足用を左足に履いてもよさそうに見える。私には、なんだかそれが気持ち悪い。こどもの頃とかわらず、私にとって病院は非現実的で怖いところである。
私は、いまだに注射が苦手だ。
うそみたいなほんとのはなし。注射をすると倒れてしまう。
「今日は、注射だ」「痛いだろうか」「怖い」「大人だから怖くない」と色々と思考を巡らしているうちに、脳が限界点を突破し、ふっと意識がなくなるのだ。テレビアニメや漫画本なんかで、バタンキューっとなるあれである。まぁ、簡単に言ってしまえば、考えすぎなのだ。
人生ではじめて病院で倒れた時のことを思い出すと、何故か最初に水槽が思い浮かぶ。
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