エピローグ ~美味しくない料理が出来るまで~

 私が料理を嫌いになったのは、いつからだったろうか。

 私が食事を嫌いになったのは、いつからだったろうか。


 昔から、料理というものが下手だった。

 焦がしたり、生焼けだったり、味が薄かったり、食材を無駄にしたり……。

 母親から、もっと上手くなりなさいと何度も言われた。料理教室に通えばと助言もされた。

 そのたびに、反抗期だった私はいらだち、料理というものから遠ざかっていった。


 私は、美味しい料理が作れない。

 他人に食べさせられるものなんて、絶対に作れない。作ってはいけない。

 無意識に、そんな思いを募らせていたのかもしれない。

 いつしか、台所に立って料理をすること自体が、怖くなってしまった。


 料理ができなくなってから、食べることも嫌いになっていった。


 病気というわけではない。食べられるには食べられるのだが、食事というものがまったく楽しくなかった。

 一口目は「美味しい」と言うのだが、あとは、残さず食べきらなければならない課題のように思っていた。だれかが見ているわけでも、注意されるわけでもないのだが、残すと罪悪感にひどく襲われた。

 食事の楽しさというものを、すっかり忘れてしまっていた。


 そんな時。

(……というタイミングの良さはなかったのだが。まぁ、悩みつつも、ちょっとずつ改善していた最中。)

 

 思い出したのが、学生時代に作っていた「パンモドキ」だった。


 決して美味しいとは言えなかった、けれどもやたらとよく作っていた料理。

 他人に勧めるものではない、自分のためだけに作る料理。


 そうだ、私には「パンモドキ」があるじゃないか。


 美味しくはない。他人には絶対に勧めない。けれども私が、私だけが愛する料理。

 料理がド下手で構わない。SNS映えなんてしなくていい。けれども私が、私だけが楽しくいただける料理。

 そんな料理を、作っていこう。


 そう思って書き始めたのが、この『美味しくない料理の作り方』である。


 このエッセイを書き始めて、さまざまな料理を作ることができた。新しく料理に挑戦することもできた。

 また、さまざまな出会いを通して、食べることの楽しさも、思い出すことができた気がする。


 そして先日、ついに私は、美味しいカボチャの煮物を作ることができた。パンモドキクレープに挟んで食べて、めちゃくちゃ美味しかった!


 少しずつだが、美味しい料理も作れるようになってきている。なので、このエッセイは、いったんここで一区切りしようと思う。



 このエッセイを読んでくれた全ての方へ感謝を込めて。


 応援♡、評価☆、おすすめレビュー、ありがとうございます。特に、応援コメントを書いていただいた方々、たくさんの共感を、そして新たなアイデアのきっかけを、ありがとうございました。


 また、このカクヨムで、私の出会った美味しい料理たち。作る楽しさを教えてくれたシンデレラさん。食べる喜びを教えてくれたネコのオーナー。勝手に出してすみません。口で味わえなかった時期に、読むことで美味しさを味わうことができた物語でしたので、ありがとうございます。


 そして、最後に。料理下手かどうかは、比較対象がいなければわからない。いつも美味しい料理を作ってくれた、母親へ。きっと、絶対に、読んでいないけど、ささやかな感謝を込めて。

  

 『美味しくない料理の作り方』、ごちそうさまでした!



p.s.最後の最後に一言。なんか……、シリアス展開ですみません!




 『美味しくない料理の作り方』   完

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