9話 部活動2

 教師の長い話も終わり、ようやくと解放された私は一つ伸びをする。

 別段新しいことは無く、高校生活を謳歌せよとのお達しだった。

 クラスの連中は長年連れ添ったいつものメンバーで、下校を開始する。

 私も例外ではなく、隣の文学少女を待っているのだが。

 相も変わらず、本を読み耽っていた。


「別に先に帰ってしまっても構わないんだよ?」


 また、こちらを見向きもせずに答えてくる。


「君が居ないと私はゆっくり帰られないからな」

「ふむ、偶には良いじゃないか。そも、私はそれで被害にあっているのだが」

「……なに? 君、イジメでも受けていたのか?」


 そうであれば大変だ。私は彼女になんと謝罪すれば良いのだろうか。


「専ら君の彼女という噂が広まっている。どうしてくれる」


 光栄に思えと言っておけば大丈夫のようだ。


「で、君は何か部活動には勤しむのかい?」


 すっかり人のいなくなった教室はシンと静まり返り、外の喧噪が一段増して聞こえてくる。

 聞こえてくるのは運動部のドンチキ騒ぎ。新人を獲得しようと躍起である。

 中等部からそのままスライドして高等部で同じ部活動を行う生徒も多いが、外部生も加わるこの時期は大量獲得のチャンスなのだろう。


「やめておくよ。劇団の方もあるし、出来れば生徒会にも入っておきたいしね」

「そういえば君にはそれがあったな。しかし残念だ。君ならどこに所属しても一躍大スターだろうに」

「これ以上ファンが増えても相手しきれないさ。それとも専属のマネージャーにでもなってくれるか?」


 それを聞いた理玖は、ただ肩をすくめた。既にその様なものだとでも言いたげに。


「理玖はどうなんだ?」


 一見、内気な文学少女に見える理玖であるが、文武両道。文化部運動部問わず、様々な部活動を掛け持ちしていた。


「高校ではあまり手を広げる気はないよ」


 そういって、鞄から一枚の用紙を取り出した。

 高等部部活動・同好会一覧。

 びっしりと部活動名が連ねられているその一つに、丸印がなされていた。


「……不良部?」

「面白そうだとは思わないかい?」

「……」


 私には彼女の彼女の感性が解らなかった。

 というかいくら自由な校風だからと、そんな部があっていいのか。

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