8話 部活動1
程なくして、女性教師が訪れる。
入学の祝いの言葉、学園の生徒としての心構え、明日からの日程等、諸連絡を淡々と説明していく。
「あー、それと。今日このクラスで仲良くなった者もいると思うが、正式なクラス発表は明日行われる。だから此処に居るみんなで一年を過ごすのではないので覚えておくように」
と、それを聞いた周囲は「「えぇ~っ」」っとブーイング。
当然と言えば当然で。僅か数刻とはいえ、折角仲の良くなれそうな友人を見つけてこれからというところで出鼻をくじかれたことになる。
既にグループが形成されているであろうエスカレーター組事内部生徒打ち解けるというのは、外部生同士で仲良くなるのとは訳が違うだろうし。
「なんかやだねー。折角空くんと隣でお話しできるようになったのに」
「うん、そうだね。また一緒になれるといいね」
一花も例外ではないようで。
ボクはそれに上の空程度に同意はしておく。おそらく、今心を同じくしていないのは、ボクだけだろう。
一花達と離れる可能性よりも、彼と一緒になれる可能性があることに、ボクは心を高鳴らせた。
「あー、最後に。今日はこれで解散となるが、校舎を出ると各部活が勧誘をしている。そこそこ強豪な部も多いので、色々見て回ることをお勧めする。まぁ、一度見学するとそのまま入部なんてこともザラだから、そこも注意なー」
そういって、教師はさくさくと帰っていった。
周囲でも、ガタガタを帰り支度を始める。
「空くんは部活入ったりするの? やっぱり運動部?」
「あー、うん、確かに運動は好きなんだけど……」
言い淀む。
確かに運動するのは好きだ。小中学校でも運動部で汗を流していた。
ただ今回は親元を離れ、一人暮らし。学費も、お嬢様学校だけあってそれなりにする。
通わせてもらっているだけでも有り難いのに、これ以上の迷惑を掛けるのは、なんだか憚られる。
とりあえず、保留。
「一花は何か入るの?」
とりあえず向き先を変える。
一花もうんうんと唸っているようで、
「色々あるから迷うよねぇ。運動部も良いけど、練習キツそうなのはヤだしなぁ。文化部が良さそうだけど、それだと、……」
「それだと?」
と言ったところで固まってしまった。
なんだろうか。
「俺は決まってるぜぇ」
と、帰り支度を終えた銀香さんがやってくる。
さっきの一騒動があったからか、彼女がメッキだけの不良と知れ渡り、直ぐに周囲の子達と仲良くなっていた。
「どんな部に入るの?」
一花が訪ねると、
「ふふん、聞いて驚け?」
と溜めを作る。なんだろう、それほど凄い部なんてあるのだろうか。
「なんと! ――不良部だ!」
あった。
いやあるの?
「銀ちゃん流石にそんな部は無いよ」
「う~ん、ボクもそれは無いと思うなぁ」
「ふふふ、知っているか二人共。ない部活はなぁ、作れば良いんだよぉ!」
あ、この子、どこまでもやる気だ。
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