D話 悪戯に転がる
その日はとても風の強い日だった。
ごぅごぅと鳴いては道行く人を押し返そうとするほどに。
それは俺も例外ではなく。
それを見越して、早めに家を出たのはいいが、少し早すぎたようだ。
校門は開いていたが校舎にはまだ入れない。
今日は高校の受験日。周りでは教師がせっせと準備している。
邪魔をしてはならないと、とりあえず休憩できそうな処に退避する。
しばらく歩くと自動販売機とその脇にベンチがある所を見つける。
どかりと座り、一息。
しかし、と思う。
やってきたのは、通う殆どがお嬢様という百合原学園。
親の薦めとは言え、場違いなのではないか。
お嬢様というにはほど遠い、家はただの一般家庭。品行方正に育ったというわけでもなく、頭脳明晰に育ったという事もない。
運動にはそれなりに自信はあるが、何かに打ち込んで天辺目指していたこともない。
うーん……。
ま、悩んでも仕方ないか。そもそも受かるかどうかもわっかんねーしな。
と、そういえば朝ご飯を食べてなかったんだ。
着いたら食べなと、渡された包みがある。
時間もまだあるし、此処で食べるとしよう。
ずっしりとしたその包みを開けると、
バナナだった。一房。
多くない?
一本や二本ならまだしも。昼兼用?
とりあえずと一本もぎ、皮をむこうとしたところで後方からゴォッと突風が吹く。
「うわっ!?」
あまりの強さに、俺はベンチから身を投げ出される。
地面に激突する、すんでの所で両手を突き出し回避する。
なんて日だ。校舎はもう入れるだろうか。さっさとバナナを食べて会場に行こう。
……あれ、バナナどこだ?
後ほど、同じ会場だったいっちーから、先ほど起こった出来事を聞く。
俺は悪くねえよな?
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