7話 高校デビュー
「おい、そこのお前」
不良の少女と、目があった。
途端、こちらへと足を運ぶ。
さっきまで喧騒で溢れていた教室が一瞬で静まる。みんなも、彼女の動向には気を向けていたようだ。
まぁ、怖いよね。
やってきた彼女は、一花の後ろへとやってきて。
「俺のいっちーと随分仲良さそうじゃねぇか」
抱きかかえるように彼女を包みこんだ。
おっと、状況が読めないぞ。
一花は抱き付かれて驚いた後、何かに気づき、そして改めて、
「えぇっ、もしかして銀ちゃん!?」
と、驚愕してながら不良っ娘の名を呼ぶ。
呼ばれた彼女は、一つため息をつきながら。
「やっぱり気づいてなかったな。ずぅーっと、見てたのに」
「えー解らないよー! 髪は染めてるし長さも違うしー」
ああなるほど、彼女が見てたのはボクではなく一花の方か。
そして、どうやら容姿ががらりと変わっていて彼女だと気づかなかったのか。
あれかな、所謂デビューってやつかな。
彼女曰く、「いやほら、ここって自由な校風も売りだろ?」とのこと。
「それはそうだけどー……うーん、そもそも銀ちゃん素材が良いからどんなことしても様になると思うよ?」
確かに。顔立ちはキリリとしていて美人のそれ。ボクなんかはまだ垢抜けてないだろうし、正直羨ましい。
「で、こいつは誰だよ?」
銀ちゃんと呼ばれる彼女がボクをつんつんと小突いてくる。
あ、この子、近いな。ボクはあまり気にする方ではないけど。
「ほら、入試の時に話した子だよ! 私の命の恩人だよ~」
おっと。入試に命賭けていたのか。人知れず人助けをしていたようだ。良かった良かった。
「ほーん。それは俺からも礼を言わなきゃだな。俺は
「えっと、どういたしまして?」
「でも、だ! いっちーは私のだからな! 渡さないからな!」
「ええ~……」
一花をボクから庇うように抱き隠し、隠された方は何とも言えない渋い顔をしている。
そんなに仲がいいのだろうか。
私の……渡さない……あっ。
「ごごごごごめん! ボク、二人がそうゆう関係だったなんて知らなくて!?」
「まって!? 何の話!?」
「解ればいいさ」
「解ってないさ!? きっと誤解してるよ!」
「え? え?」
ボクは二人の顔を行ったり来たりと視線を動かす。
片やクツクツと楽しそうに笑い。
片やオドオドと慌てて否定して。
「もー違うから―! ただの幼馴染ですから―!!!」
そんな一花の雄叫びが木霊した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます