6話 必然でもない
彼と別れ、私は内部生が待機する教室へと足を運ぶ。
中等部までのクラスは4。そこに外部生2クラス分を追加して、高等部では6となる。
今日はそれぞれで今後についての説明が違うため、別クラスとなってはいるが、明日には混合されたクラス割が発表される。
――彼と同じ
そう思うと、自然と足取りも軽やかになろうというもの。
「今日は随分とご機嫌ではないか」
自分の席に着くと、間髪も入れずに隣の娘が語り掛けてきた。
彼女はこちらをちらりとも見ずに、文庫本を読んでいる。
「今し方、説教を受けてきたとは思えないね」
何故知っているのか。
彼女は
腐れ縁といっても良いほどの、幼馴染である。
「今朝出会った子が、君のお眼鏡に適っていたようだね」
何故わかるのか。
とはいえ。その程度で、自分でも解るほど浮かれなどはしない。
はずだ。
「良かったじゃないか。可憐な花を取っては散らし、この花畑の全てを愛し尽くしてしまって手持無沙汰だったのだろう?」
「おい待て。私がまるで獣のようではないか」
「違うのかい? その様な噂を今、耳にしたものでね」と、読んでいる本の頁をめくる。
そんな噂初耳だ。
「違うさ。私は摘んだ花を散らしたりはしない」
「君、訂正するのはそこだけで良いのかい?」
「……」
「……」
窮した。
仕方がないので話題を一つ切り替える。
「それは誰が噂していたんだ?」と尋ねる。
出所を突き止めて問いたださねばなるまい。
「私だが」
突き止めた。
こいつめ。
「今考えた。本人の添削も入ったのでこれから流布しようと思う」
「理玖、私を揶揄いたいだけだな?」
彼女はクスクスと笑い、「そうだとも」と答える。
こうして今日もまた、彼女の手で踊らされてしまっている。私たちの口撃パワーバランスは彼女の方に軍配が上がるのであった。
くそう。
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