5話 偶然ではなく
入学式に間に合ったボク達は、案の定、その後にお説教を喰らってしまった。
お互い、ばつが悪そうにしてはいたけど、ボクの頭にお説教なんて入りこむ隙も無いくらい、いっぱいだった。
内部生と外部生は、クラスが違うらしく、此処でお別れとなった。
「またね」と声を掛けると、「ああ、またな」と返してくれた。
それだけでも少し、嬉しくて。
外部生が集まる教室に入ると、がやがやと、既に幾つかのグループが形成されていた。
辺鄙な田舎からやって来たボクにとって、当然ながら、見知った顔は居ない。
はずだった。
「あ、あの!」
自分の席を探す途中、突然と声を掛けられた。
「茜谷さん、だよね?」
と、小動物のような、可愛らしい子がいた。
なぜボクの名を、問おうとしたところで思い出した。
「あ、えーっと、雲居さん、だっけ?」
「はい!」
出会ったのは受験の当日。
彼女が落とした受験票を拾ったのが切っ掛けだった。
あの時は申し訳なくも、今にも泣きだしそうでおろおろしている雲居さんがまるで子猫のようで可愛かったなぁ。
「改めて、
深々とお辞儀をする彼女に、気にしないでと返す。
「雲居さんも合格できてたみたいでよかった。これから3年間よろしくね」
「はいっ♪」
ぱあっと、向日葵が咲いたようだ。
席が近かったこともあり、意気投合したボクたちは互いの事を話し、自然と名前で呼び合うようになっていた。
「――」
親睦を深めるために互いの事を話していると、
「―――」
どこからか視線を受けていることに気付く。
見渡してみると、それが誰かはすぐにわかった。
髪色は金。入学初日だというのに制服は着崩され、あまりお行儀が良いとは言えない座り方をしていた為、完全に周りから浮いていた。
所謂ヤンキー。不良少女の印象を受ける。
その彼女が、ボクの事を、鋭く睨んでいた。
――ボク、何かしたんだろうか?
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