B話 初恋side海
――私は彼に恋をした。
幼い頃、私は母方の実家に1ヶ月程滞在していたことがある。都会とは違い、自然豊かな其処は、何から何まで目新しい物ばかりだった。
ある日、散歩をしていたら子供達の遊ぶ声が聞こえてきた。
楽しそうにはしゃぐ声に惹かれ、遠巻きにとその様子を伺った。
遊んでいるのは数人の男の子。その中でも一際活発に動いている子がいた。
――きっと一目惚れだった。あの輝く笑顔に惹かれたのだ。
すぐにもでも交ざりたかったが、綺麗な白のワンピースを汚してしまっては母様が悲しい思いをしてしまう。それに、女の子が見当たらないようなので、きっと男の子としか遊んでいないのだろう。
なら私はそれと気付かれないにしなくてはならないと思った。
直ぐに家へと戻り、彼が着ていた服を用意させた。
次の日、私は彼の前へと躍り出た。
鼓動は高鳴り、拒絶されたらと不安で一杯だった。
しかしそんなことは杞憂だった。彼は昨日みた眩しい笑顔と共に、手を引いてくれたのだ。
すぐに打ち解けた私は、彼から教わる様々な遊びを 遊びを楽しんだ。
ルールを把握してしまえばどうという事の無いような遊び。経験の少ない私が彼らを負かすのにそう時間はかからなかった。
少し、気不味いだろうかと、思ったりもしたが。
でも彼は凄かった。負けた事を悔しがり、次こそはと笑い、次にはもっと上手くなる。
彼と会えば会うほどに、私は惹かれていった。
でも、その日々は長くなかった。
母様の里帰りが刻限となった。僅かな時間とはいえ、私が彼に抱いた想いは今でも大きく居座っている。
それが、私の初恋だ。きっと、これ以上の恋をすることは無いだろう。あぁ、だからこそ、悔やまれる事がある。
――彼はきっと、私の事を男だと思っているんだろうな、と。
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