2話 再会は衝撃的に2
そういえば、そんな季節か。
桜が舞う空を見上げ、思う。
玄関から外の様子を伺い、出待ちが居ないことを確認する。もう、居ないな?
安堵して玄関をくぐり、家の者に「行ってくる」と挨拶を交わす。
私、
それには幾つかの理由がある。
一つ、私が通う百合原学園が小中高一貫の女子校であること。
一つ、私が大企業の令嬢であること。
一つ、私が美形且つ運動神経が抜群に良いこと。
一つ、そして私が日頃から男装をしていること。
モテない理由がないな?
入学当初からちやほやされていたもので、気付けば朝には出待ちを狙う輩が湧くようになっていた。
中学に上がってからもそれは変わらず、悪い気はしないが流石に鬱陶しいので彼女らが立ち去ってから登校するようになった。
お陰で遅刻常習犯である。
今日は高校生となる初日なので、流石に長い時間張り付いている子は居ないようだった。
少し走れば間に合うだろうか。
いや、それよりも桜を楽しみながら歩いたほうが有意義だろうな。
今日から高校生ということは、外部からの入学式があるのだった。
一貫校とはいえ、人気が高い学園故、毎年少数の枠組みながら新しい子を入れている。
……可愛い子が多ければ嬉しいな。
そう思ってしまうのは罪だろうか?
大抵は頂けてしまうのだから、きっと罪なのだろう。
楽しみだ。うむ、実に楽しみだな。
期待に胸を膨らませていると、曲がり角から足音が聞こえてきた。
足取りは軽く、速い。この時間に此処を通るとなれば遅刻しそうになった我が校の生徒だろう。
そうだと気付くと一つ、閃いた。
折角だ。これはドラマチックな出逢いをしなければなるまい?
タイミングを合わせるために角で待機する。
タッタッタッ、と近づく音に、今だと身を乗り出す。
バッチリだ。距離にして3歩程度。
まず目に映るのは我が校の制服。1歩。
走るフォームはアスリート選手のように綺麗だった。1歩。
私は手を広げ、抱き留める用意をしたところではたと気付く。1歩。
「空君!?」
なんということだ。身を揺らす程の衝撃とはこの事か。
まさか、まさか彼に再び逢える日が来ようとは。
あまりの事に宙に舞うような気分だった。
実際舞って、落ちて、のたうち回る訳だが。
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