A話 初恋side空

――ボクは彼に恋をした。


 幼い頃、ボクは近所の友達、女の子はボクしかいなかったので、男の子とよく遊び回っていた。さながら、ガキ大将のようだったと思う。

 そんなある日、見知らぬ男の子が現れた。

 Tシャツに短パン、ボクと似たような出で立ちをした彼は、どうやら一緒に遊びたかったようだ。

 すぐに打ち解けた彼は、サッカー、野球、鬼ごっこにかくれんぼ、体を動かすあらゆる遊びをやったと思う。

 彼は凄かった。初めての遊びでも一度やれば簡単にマスターしてしまう。


――素直に憧れた。格好良いと、そう思った。


 毎日遊ぶうち、気づけばその想いは、変わっていた。

 子供ながらにも、ボクは彼に恋をした。


 でも、その日々は長くなかった。

 どうやらこの田舎にやって来たのは母親の里帰りだったようで、1ヶ月の後、東京へと戻ったようだ。


 その頃に何かをした記憶があまりないのは、多分、ポッカリと穴が開いてしまったからだろう。実際は3週間も遊んではいないだろうに。


 それが、ボクの初恋だった。ちょっと切ないなと、思うこともあるけど、それ以上に思うことがある。



――彼はきっと、ボクの事を男の子だと思っているんだろうなって。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る