【4】

どういうこと?



男はすぐに映像を止め、『後で編集して渡すから楽しみにしとけよ』と、ニヤニヤしながら部屋から去って行った。



「翔たんお疲れ様!」

「いやマジお疲れ様だわ。愛たんもお疲れ様!」


「翔たん、ちょっとベタベタしすぎだったぞ!愛たんという者がありながら、この浮気者!」


「ごめんよ愛たん!演技!演技だから!」


「えへっ、解ってますぅ。冗談だよ!だって、相手が相手だし、ねぇ?」



意味が解らない。何これ?何なのこれ?ねぇ何なの?解らない解らない解らない――考えようとするのに、考えようとするそばから、バラバラと考えがほどけていくよう。




『困ったら人形をーー』





ほどけて消えていく思考たちとは逆に、くっきりと輝くように在るそれに手を伸ばす。




あたしは人形を掲げ唱えた。






◆◆





こうして、あたしの長い長い初恋は露と消えた




はずだった





「…っく、…はぁっ、…はぁ。…ふうっ、はぁっ、はぁっ……ぅうっ、もう、む、無理っですっ…」


「は?無理な訳ないでしょ。まだ限界じゃないことくらい分かってんだからね。」


「やっ…もっう、げ、んかいで…」


「はんっ、そういう演技ばっか上手くなって。小賢しい。言い付け守れなくて、お仕置きされんのが目当てでしょ。アンタの魂胆はお見通しだよ。」


「うっ…、ああ…、駄犬の卑しい望みを、どうか叶えてください。」


体を起こし、あたしの足にすがりついてきた相手にイラッとなる。


「ねぇ、誰が止めていいって言った?アンタなんか捨てて、賢い犬を飼ってもいいのよ。」


蹴られた駄犬が、慌てて腹筋を再開した。





あの最悪としか言えなかった日、気が付けば何故か幼馴染みが、あたしのお尻の下で潰れて居た。



意味が解らない。



問いただしても訳の解らないことばかり言う幼馴染み。要約すると、あたしの椅子になろうとして、役目を全う出来なかった、と。


あたしが重いって言いたいのかコノヤロー。



それはどうでもいい。良くないが。幼馴染みの本性がクズ野郎だったことを知り、金輪際関わらないって決めたのに、何をとち狂ったんだか、あの日以降執拗に絡んでくる。



あまりにもウザくて突き飛ばせば、嬉々とした顔であたしを見る。


いい加減我慢の限界でぶん殴れば、鼻血垂らして恍惚とする。ーーあ、これ駄目なヤツだと悟った。




大学でご主人様とか言われると外聞が悪いから、外でそういうことはしないよう言い聞かせ、結果、密室で躾等をやらされる羽目に。


意味が解らない。




まずはあたしの椅子の役目を果たせるように、こうして日々鍛えてあげてる。



自分で言っててなんだけど、あたしの椅子の役目て・・・と思わないでもないよ?いや、思ったら駄目!それを思ったら、自分のやってる行動の数々に、羞恥で床を転げ回りたくなっちゃうから!



ああ、ホント、どうしてこうなった!?



あの日、美少年の夢ーー多分夢だよね?現実だと思えないもの。変な夢に出てきた美少年、本当に綺麗な顔してたな。テレビか何かで見たら絶対に忘れられない美貌の持ち主だったけど、見た記憶が全然ない。


あたしの妄想力の産物だろうか。もしそうなら、また夢で会えるかな?ーーもしもまた会えたら、いろいろ話してみたいかも。



何て美少年のことを考えて現実逃避してみたり…



だって現実逃避しなきゃやってられないと思うのよね!



美少年の夢を見てる間に、ホント何があったんだろう?ーー人形が巨大化してお仕置きしたとか?


何がどうしてこうなったかは、知りたいような知りたくないようなーーやっぱり知りたくないかも。うん、人間知らなくて良いことってあると思うの。





でも、何度も思わずにはいられない。





どうしてこうなった!?







************


立夏

前はぽっちゃり女子(見た目)

現在、身長195、ガチムチ。身体は男で心は乙女。


主人公はそこを理解してたので、ちゃんとお姉さんとして扱った。



立夏を女の子と勘違いしていた。好きな娘との初体験を上手くやりたくて、先に立夏で練習しようとした。

勝手に勘違いしてただけで、立夏が性別を偽ったわけではないが、本人は騙されたと思い込み立夏を嫌悪。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る