51.美味しい物を求めて
電車で二時間くらいの場所にある、ここって地方だよね?的色合いの濃い都会の端っこの駅で降り、そこからさらにバスで数十分。
バス停側の山に分け入り数分後、灘流に背負われての山道移動である。
言ってみるもんだね、歩きたくないって。
晴れ渡る空を眺め、吹く風が葉を揺らし奏でる音色に耳を傾ける。
感性を刺激され緑豊かな道を行き、排気ガス溢れる大都会では無縁の、爽やかな香りを思いきり吸い込んで満喫しよう。
すーはーすーはー
澄んだ空気の中で嗅ぐ美少年の匂いは格別ですね。
良い匂いを嗅いだら性よーー食欲、うん、食欲が刺激された。
カプー
「ふおっ!?ちょっ、姉ちゃん!?」
「美味しそうだったから、つい。」
「ついじゃないよ!急に耳噛んじゃ駄目でしょ。」
「じゃあ断りを入れ「先言っても駄目。」
「はむはむするくらい、減るものじゃないし良いのでは。」
「はむはむは、くらいで済ませられる行為なのか疑問なんだけど。」
「食い千切らないから、噛んでいい?」
「お腹減ってるんだね。オヤツ持ってきてないの?」
「ポケットのオヤツ、補充しとくの忘れてた。」
不思議ポケットの食料が無くなるから補充しなければーと思いつつ、エロス世界に思いを馳せてたら補充し忘れてた。
「姉ちゃんが食べ物のこと忘れるほどの重大な案件でもあるの!?ーー異世界侵略計画が行き詰まってるの?それとも気にくわない神を滅する呪文作成に行き詰まってるの?」
単にエロのせいです。
「異世界侵略ね…。美味や珍味あるかな。」
「どうだろね。この世界基準の美味を求めるとガッカリしそうだけど。まぁ、珍味はあるんじゃない?ーーほら、飴ちゃん食べて我慢して。」
オレンジ味の飴ちゃんウマウマ。
「喜村さん家ってこっちでいいの?」
「え?」
「え?ーーえって何?喜村さん家行くんだよね?」
「喜村家行くよ勿論。でも先に、当初の目的であるめちゃうま釜飯屋に行くよ。」
「いや、当初の目的が喜村さん家じゃ。」
「釜飯ついでの喜村だよ。」
まったく灘流は何を分かりきったことを確認してるんだか。
魔法具で美味しい釜飯屋を調べたら、偶々喜村家の近くだったから、釜飯のついでに喜村家に行こうと思ったわけです。
因みに喜村家は降りた駅と違う駅なうえ、駅から車で30分くらいの場所にある。ーー釜飯食べたらめんどくさくなって寄らない可能性大である。
そんなこんなでやっと到着した釜飯屋は、山小屋風のお店だった。
どうでも良いが、何故こんな辺鄙な場所に店を建てるのか。
訪れるのが大変な場所に店を構えても、客を呼べる俺かっけぇ的ノリですか?
確かに客は呼べてるよ。結構並んでるし。でも、出来ることなら通いやすい場所にしてほしかった。
苦労したら美味しい物は更に美味しく感じるとかなんとか、そういった感情論的なことを言う人がいるが、更に美味しいとかは別にいいので、普通にすぐ行けるとこで苦労せずに美味しい物を食べたいです。
店主オススメ釜飯は、なんちゃら賞を取った山菜釜飯だったので、照り焼きチキン釜飯を注文。ーー山菜食え?食いません。
山菜以外の何種類か食べ、転移で家帰ってもいいかなと思ったが、降りたことのない駅にちょっと興味もあったから、やはり喜村家に行くことにした。
グルメサイトで宣伝していない隠れた名店とかあるかもしれない。あるといいな。
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