第12話

ぐぅー、と腹の音が鳴り空腹を感じて目が覚めた。辺りを確認すると、一緒に寝ていた姉さんがいつのまにかいなくなっていた。寝ぼけた頭で時計を確認すると丁度午前を過ぎたあたりだった。いつもだったら午前中に姉さんか薫子さんのどちらかが起こしに来ると思うんだけどなぁ。とりあえず、一階に降りてお昼ご飯でも食べよう。お腹減った。


一階のリビングにも誰もいなかった。そして、ご飯も用意されてなかった。むぅ、仕方ない。冷蔵庫の中に何か直接食べられるものが無いかと探しているとベランダの方で話し声がする事に気づいた。あ、もしかして僕達が作ったガーデニングに2人ともいるのかな?


それなら丁度いいから絵を描くための画材を部屋から持って来ようかな。冷蔵庫から発見した魚肉ソーセージとチーズを食べながら自分の部屋に戻った。


絵を描く準備をした所で庭に向かうと薫子さん達以外にも人がいた。なんだ来客中だったのか、道理で起こしに来ない訳だ。来客者は4人で見た感じ僕達と同じく力を持っている様なので精霊なのかな?そういや、母さん達以外の精霊に会ったことないや。姉さん達は夜中に作ったガーデニングの近くにテーブルを置いてお茶をしながら優雅に対応しているみたい。


ぼうっと眺めていたらをしていたら姉さんに気づかられた。


「あ、紫苑おはよう。チーズなんて咥えてどうしたの?」


「お腹空いて目が覚めた。」


「え?あっ!もうこんな時間。今から超特急でお昼ご飯作るから待っててね。それと来客者がいるんだから服を着なさい。」


そう言って談笑中だったのにも関わらず慌てて家の中に戻っていった。さっきまでの様子と打って変わった姿に薫子さん以外の4人は呆気にとられていた。


こほんと咳払いをしてから薫子さんが自己紹介の仲介をしてくれた。


「こちらにいる方達は4幻獣と呼ばれてる人達で東の青龍に西の白虎、北の玄武に南の朱雀と第二世代セカンドの中では最古参の方々です。」


「そして今しがたチーズと画材を持って来た方が、白雪ゆり様の双子の妹である白雪紫苑様でございます。」


「よろしく。」


「おぉう、全裸はスルーなのかよ。女の子なら恥じらいをだなぁ。はぁ、俺は主に春を担当している青龍だ、よろしく頼むよ。」


「私は夏を任されている朱雀よ。何だか紫苑ちゃんとはシンパシーを感じるわ。仲良くしましょ。」


「どこにシンパシーを感じたんだよ。胸か?胸なのか?」


「聞こえてるわよ。喧嘩売ってんの?」


「これこれ戯れるでないわ、まったく。儂は秋を取り仕切っている白虎じゃ、お主たちが通う高校の理事長も務めているので何かあれば面倒を見ることなっとる。よろしゅうな。」


「我は玄武。冬を司っている、以後よしなに。」


青龍さんは青年のような見た目で青髪の短髪に龍の尾と翼が生えているのが特徴で、朱雀さんは真っ赤な髪をした少女で背中には煌びやかな羽が印象的だ。


白虎さんは虎の耳と真っ白なお髭が特徴の好好爺みたい、玄武さんは背中の亀の甲羅が目を引いて、寡黙な人って感じだ。


「彼等は紫苑様達に会うのが目的で訪問されたようです。」


「ま、それと伝えないといけねえもんがあって皆んなで訪れたってわけだ。」


「そうなのよ。ゆりちゃんにはもう話したんだけど、紫苑ちゃんにも言っておくね。」


「爺さんの学校には俺たちの眷属、もとい従者達の子供らも通っているんだがなぁ。これがまた高慢ちきでよう、私達は選ばれた存在だ って感じで学園内で幅を利かしてるみたいなんだわ。」


「私達は日本で有名な精霊って事になってる所為で余計に増長しちゃってね。それで紫苑ちゃん達に迷惑をかけるかも知れないから先に謝っておこうと思って。」


「全く儂の様にしっかりとせんからこう言う事になるんじゃ。」


「以下同文。」


「おぉい。あんたらの所も大概だからな。大体多すぎて全部把握しきれないんだよ。」


なんだか大変そうだなぁ。僕達に仕えてる人なんて薫子さんと悠人さんしか知らないや、一体何人ぐらいいるんだろ。あ、そういやプレゼントのガーデニングはどうなったのかな。後で姉さんに聞いてみよう。


ご飯ができるまでの間に持って来た画材を使ってデッサンでもして時間つぶしておこう。お昼ご飯は何かな。


「何というか我関せずって感じだな。ちゃんと話聞いていたか不安になるんだが。」


「あー、うん。聞いてる聞いてる。」


「本当かよ。取り敢えず話を続けるぞ。」


「お構いなくー。」


「それでよう。そいつらに何かされた場合はボコボコにしていいからな、俺たちが許す。鼻っ柱をへし折ってやれば幾らかマシになるだろうよ。」


「だから紫苑ちゃんのお母さん達には内緒にしてくれない?ばれたらどうなるか考えただけでも怖ろしい...。」


ふむ、確かに母さん達は怒ると怖いな。怒られたのは数えるぐらいしか無いけど菫母さんは恐ろしかった。今でも思い出しただけで身震いする。


「ばれたくないなら、そうならないようにすれば良いのに。」


「もっともな事なんじゃがのう。儂らが直接動けばお主らが学園に通っている事が外部に漏れてしまう可能性があるのじゃ。」


「情報漏洩は可能な限り最小限に。」


そういう理由なら仕方ないのかな?だけど、その割に僕達の家に全員で来てるのは大丈夫なんだろうか。


「安心しろ。ここには転移陣を使って来たから人目には付かねえよ。」


「でも、それは母さん達にしか使えない秘術って言ってたよ?」


「あぁ、言っとくが俺達にあんな繊細な事出来ないからな。お前達の母さんが創った物を使わせて貰っただけだよ。」


「それにしても転移して来たらびっくり。とっても素敵なガーデニングがあるんだもの。つい見とれちゃったわ。」


そんなこんなで話していたら姉さんのお昼ご飯が完成したみたいなので家の中に戻ることにする。青龍さん達の分まで用意していたので皆んなで食べる事になった。大人数で食べる食事は初めてだったけど悪くない感じだった。


食事が終わると皆んな仕事を抜け出して来てたみたいなのでしぶしぶ帰っていった。静かになった所で洗い物を薫子さんがしているうちにプレゼントがどうなったのかを聞いてみた。


「それがね、予想外の来客で有耶無耶になっちゃっててどうしようか迷ってたの。」


「んー。今回は諦めて次にする?」


「そうしましょうか。もうサプライズ感も無くなってしまった事だしね。」


ならば変わりに絵だけでも描いて渡そうと思っていたら姉さんも同じ様な事を考えていたらしく趣味の楽器で演奏をしようとしていた。


思い通りにはいかなかったけど贈った絵と演奏に薫子さんが凄い嬉しそうにしていたのでよかった。でも次はもっと念入りに計画してからにしようと姉さんと誓い合いあって1日が過ぎ、数日後の受験まで変わらぬ日々を過ごしていった。

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すぴりっと〜双子のほのぼの成長記録〜 touhu @kouyatouhu

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