第11話
色々あったお昼を終えて僕達は昨日薫子さんが言っていた宝石店に向かう事にした。
そのお店は手頃な価格でアクセサリーを買うことができるため学生にも人気があるそうだ。薫子さんがプレゼントしてくれるそうなので姉さんと一緒に選ぶ事にした。
「お揃いの物を選びましょ。」
「どれにする?」
「無難なのはネックレスかしら。」
「そう。ならこの花の形してるのはどう?」
「それいいわね。私達の名前と合ってるのが良い感じね。」
「オプションで花の中心にある宝石を入れ替えることもできるみたいだよ。」
「なら紫苑は瞳の色と同じ紫のアメジストね。」
「それならお姉ちゃんはサファイヤだね。」
小さい花の中心に宝石をはめ込んだネックレスを薫子さんに買ってもらった。
せっかくなのでその場で着けることにする。お互いに着けさせあっている様子を薫子さんと悠人さんは目を細めて見ていた。
二人の胸元のネックレスは儚い少女を神秘的にし、可憐な少女をより引き立たせるものとなった。
お互いの姿を確認し、満足した後に姉さんがネックレスにおまじない?をかけてくれた。僕の可愛さが上限突破してるので、これ以上騒ぎにならないようにするための処置だとか。
感覚のいい人には効果ないけど普通の人には誤魔化し程度になるとか、よくわからないことを言っていた。というか、今まで通りすがった人達の挙動がおかしかったのは普通ではなかったみたい。
「これからどうしますか?」
「そうだねぇ。紫苑はどこか行きたい場所ある?」
「画材店と寝具店ぐらい。お姉ちゃんは?」
「私は楽器店と雑貨店かな。」
「全部回っていたら時間が足りなさそうですね。」
「じゃあ、ここからは別行動にしましょう。」
「紫苑様と一緒じゃなくてよろしいのですか?」
「いいの、いいの。」
待ち合わせ場所を決めた所で薫子さんは姉さんに半ば強引に連れていかれ、残った悠人さんと一緒に行動することになった。
別れ際の姉さんとのアイコンタクトで昨日の夜に話し合った事を思い出した。いつもお世話になっている薫子さんにサプライズプレゼントしようと2人で決めたんだった。
その渡すものを別行動している内に悠人さんと探して来てということだろう。とりあえず寝具店に向かってから考えようかな。
◇
「そういうわけで薫子さんに何をプレゼントすればいいかな?」
「そうですね。花なんてどうですか。家にいたころはよく花壇の世話をやっていましたよ。」
「花かぁ。それもいいけど驚きにかけるかも。」
「驚きですか...」
ディスプレイのベットの上に寝転がりながら悠人さんに事情を話してプレゼントの相談しているが中々良い案が浮かばない。あー。このベットの寝心地いいなぁ。
「それならいっそ買うのではなく、紫苑様たちでお作りになった物を贈りになったらどうですか?」
「おー、その発想はなかった。でも喜ぶかな?」
「私たち一族ならお二人からの贈り物が何であろうとも家宝になりますとも。贈られた暁には皆に自慢しまくりですよ。」
「そ、そうなの。」
ちょっと食い気味に言ってきたので驚いた。そんなに嬉しいものなら姉さんと何か作ってみようかな。どうしようかと悩みながら寝具店を後にして、画材店に向かうことにした。
画材店は沢山の種類があって初めて見るもの多くとても面白かった。流石、何でも揃うと言われているショッピングモールなだけある。
僕は趣味で水彩風景画を描いている。スケッチブックに基本、筆と絵具を使って描いていたので水彩色鉛筆というものがあるなんて知らなかった。
珍し気に見つめていたら悠人さんが買ってくれたので今度使ってみよう。その他にも普段使っている筆や絵具も買って貰い、たっぷりと満喫した所で待ち合わせ場所に向かうことになった。
「随分と楽しんでおられましたが、良い案は思いつきましたか?」
「あ。」
「やはり忘れてましたね。」
夢中になって画材を見ている場合じゃなかった。
えーと、薫子さんは花を世話するが好きで、僕たちが作った物なら何でもいいか。あれ、範囲広すぎじゃない?考えてみたら花と創作しかわかってないや。
ひとまず色んな種類の花の種だけでも買って行こうかな。種だけなら薫子さんにばれないだろうし、僕たちの力を使えば花ぐらいならすぐに咲かせることができるから、どうするかは姉さんと話し合って改めて決めよう。姉さんなら何でも解決してくれるだろう。
待ち合わせ場所についてからそれぞれ買ったものやどこに何があったなどを話していた。姉さんたちは動物の小物入れ等々のファンシー雑貨と趣味の楽器の弦や楽譜を買っていた。
ショッピングモールの全体を回ることが出来なかったけど、まだまだ楽しめそう。今度は人が少ないときに来たいな。人混みはあんまり好きじゃないかも。
夕飯は昨日の内に買っておいた食材があるので家で食べることになり帰宅することにした。帰りの車の中で姉さんが小声でプレゼントについて聞いてきた。
(何か良さそうなプレゼントはあった?見たところ画材しかなかったけど。)
(花の種だけ買ってみた。)
(何で種だけ?確かに花は好きだったと思うけど。)
(花だけだと驚きにかけると思って悠人さんに相談したら、僕たちの手作りしたものが良いってことになったの。)
(なるほど手作りねぇ。まあ、大体の事情は分かったわ。)
(後はお姉ちゃんに任せた。)
(頼りにされるのは嬉しいんだけど、少しは自分で考えなさい。)
よし、この先は姉さんに任せておけば万事解決だろう。今日は姉さんの代わりに夕飯の準備でも手伝おうかな。
家に帰りついてからは特に何事もなく過ごした。ただ、夕飯は悠人さんも一緒で久々に食べた薫子さんの手料理を美味しそうに食べていたのが印象的だった。
そのまま泊っていくかと思ったら夕飯を食べ終えてすぐにまだ重要な仕事が残っているといって帰っていった。
見送った後に薫子さんとお風呂に入ったが、一緒のお風呂は色々とすごかった。特に全身マッサージの時は力加減が絶妙で疲れが取れていくようだった。お風呂から上がると、何故か少し不満げな姉さんに連れられて一緒に寝ることになった。
そして皆が寝静まる夜中に姉さんによって起こされた。
「眠い...。何の用?」
「いい事思いついたのよ。薫子さんに気づかれないように夜中に準備しようと思ってね。」
「んー、何するの?」
「薫子さんにガーデニングを贈ろうと思ってね。」
「ガーデニング?」
「そうよ、家の庭を花の庭園にするの。私達にしかできない方法を使ってね。」
そう言い終わると花の種とまだ寝ぼけている僕を抱えて気づかれないよう忍び足で庭へと向かった。
庭に出ると花の種を撒き、庭の真ん中で姉さんと向かい合って両手を合わせる。
安定期を迎えてから初めての共同作業なので少し緊張する。僕は花の成長を促し、姉さんが細かい調整と花が育つための環境を整えていく。
するとシルバーブルーや黒色といった珍しい種類の薔薇や色とりどりのパンジー、ユリや紫苑の花などが庭いっぱいに咲き誇った。
普通の花でも僕たちの力を使えば、好きな色や形に変えることができるために世界で一つだけのガーデニングになった。
「ふう、うまくいったわね。」
「喜んでくれるといいな。」
「そうね。気付かれないうちに早く戻りましょう。」
庭のガーデニングをみたらどんな反応してくれるか楽しみだな。
あ、そうだ。買って貰った画材でガーデニングを風景に薫子さんでも描いてみようかな。ふふ、何だか外の世界に来てから何でもない日常が楽しくなってきた。
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