第10話
何事もなく無事ショッピングモールに到着した。このショッピングモールは6階建で特徴を持っている人でも大抵の物が揃い、駅からも近いために人気の場所だそうだ。
特に今日は休日なので多くの人が訪れていた。逸れないように姉さんと手を繋いでおく。まず最初に洋服を買うために3階に向かう事になった。
ごつん、がしゃん、ぼとっ、と人が通りすがる度に変な音が後ろからする。
気になって振り返ると柱にぶつかって蹲っている人や、手荷物を落として慌てて拾ってる人がいた。目が合うと全員びくっと驚いたようなってるのが面白い。変なの。
「なんだあの美形集団…。」
「姉妹なのかなぁ?こっち見てた妹の方めっちゃ可愛いな。」
「お前ロリコンかよ、姉の方がスタイル抜群でいいだろ。」
「スーツの男の人イケメンだったなぁ。皆んなに教えなきゃ。」
薫子さん達は特に何の反応もないから後ろの様子は普通の事なんだろう。ならいいや。
それにしても色んな特徴を持った人がいるなぁ。頻りに何かを弄ってる狐の尻尾がある女の子や壁にぶつかってたうさぎの耳をしてる背の高いお兄さんもいる。どんな手触りなのか気になるな。
周りの店を見ながら後で行ってみたい所が無いか探していたら洋服店に到着した。店員さんは僕達を見た時、一瞬動揺したものの笑顔で対応してきた。
「いらっしゃいませ。本日はどのような物をお求めでしょうか?」
「今日は冬物と春物の新作の服を買いに。」
「それでしたらこちらに…。」
薫子さんと姉さんが案内された場所で洋服を吟味して選んでいく様子を悠人さんと2人で眺めていた。
「こう見てるとゆり様も普通の女の子に見えるな。ただ選んでる量が普通じゃないがな、薫子まで一緒になって選んでるし。ここ一様有名ブランド店なんだが。」
「ブランドって何?」
「端的に言うと高級品ですね。」
「高いんだ。」
「高いんです。」
悠人さんと会話してたら姉さんが手招きしてる様子が見えたけど、見ないふりをして店の外に出ようすると悠人さんに引き止められた。
「呼ばれてますよ、紫苑様。」
「見逃して。」
「申し訳ございません、それは無理です。」
「どうして?」
「薫子の顔を見てください。微笑んでいますが目が全く笑ってないです。あれは何としてでも逃すなと言ってるのと同じです。」
「そんなぁ。」
最初は着せ替え人形になる事を覚悟してたけど、いざ積まれてる服の量を見ると逃げ出したくなった。終わるまでどれだけ時間がかかるのか想像したくない。
「「キャァァー!お人形さんみたい!」」
「うん。紫苑に似合うわね。じゃ次はこれね。」
「こちらの色の方が似合うかと。」
「今の時期でしたらあちらの方がブームですよ。」
なんか気付いたら店員さんまで一緒になって選んでるし、人数が増えてる。あー、早くこの場から誰か解放してくれないかなぁ。そう思いを込めて悠人さんに視線を送る。
「紫苑様の目が死んでるな。後でフォローしなければ。今のうちに好きなものでもで確認しておこう。」
悠人さんは何故か終わるまでずっと目を合わせてくれなかった。
「酷い目にあった。」
「申し訳ございません。私1人では無力でした。」
「この借りは大きい。」
「後日お詫びに高級品寝具を送っ。」
「許す。」
「ありがとうございます。」
うむ、寝具はいくらあっても困らないからな。新しい物を試すのも悪くない。しかし疲れたな、姉さん達が支払いを済ませるまで近くのベンチに悠人さんと座って休憩しておこう。
「ふぅ。満足したわ。紫苑もお疲れの様だしちょっと早いけどお昼を食べて休憩しましょうか。」
「あれ?荷物は?」
「流石に量が多かったので家に配送する事にしました。」
「俺1人であの量は無理だし、それに後の買い物の邪魔になるからな。」
「それより混雑する前に早く移動しましょ。」
「1階がフードコートになっておりますよ。」
「そうだな、じゃあ向かいますか。」
「おー。」
1階に降りると昼時より少し早いために無事に4人席を確保することが出来た。
周りには様々な店があり、そこから自分の食べたい料理を選んで食事するシステムになってるらしい。ここでは豪華な食事は期待出来なさそう、仕方ないからまたな機会にしておこう。
「食べたい物が決まったら言って下さい。買って来ますから。」
「僕はラーメン。」
「なら私はうどんで。」
「蕎麦をお願いします。」
「了解。それじゃあ少し待ってて下さい。」
私も手伝うと言って姉さんも一緒行ってしまった。待っている間、薫子さんと次どこに行こうかとパンフレットを見ていると2人組の金髪の男の人に声をかけられた。
「君達可愛いね。暇なら僕達と一緒に遊ばない?」
「いいねぇ。人数も合ってるしよぉ。」
おぉ、これが俗に言うナンパというやつか姉さんが言ってたな。
「いえ、人を待ってますので。」
「そんな事言わないでちょっとでいいから付き合ってよ。」
「結構です。」
「なんなら全部奢ってあげるからさ。」
「鬱陶しいですね。」
(全く私達がいるからって分家の人達手を抜きましたね、これはこの2人共々教育しなければいけませんね。うふふ。)
ひぇ。薫子さんが黒いオーラをどんどん纏っていってるんだけどこの人達気付いてないの?周りの人もほとんど気づいてないし。
「あんたら俺達の連れになんかようか?」
どうしようと思ってたら今度は違う2人組の男の人が割って入ってきた。1人は犬の耳と尻尾があってもう1人は猿の尻尾を生やした180を超える大男だった。
「げっ、
そう言うや否や金髪男達は去っていった。助かった色んな意味で。
「ありがとうございます。助かりました。」
「いや、むしろ助かったのはあいつらの方じゃないか?」
「銀髪の貴方から何か危ない気配を感じてな。」
「何のことでしょう?」
「まぁいいや。これからは絡まれないよう気をつけてな。」
そう言って2人は昼時の混雑した人混みの中に消えていった。知らない人達だったけど、またどこかで会いそうな気もする。丁度入れ違いで姉さん達が戻って来たのでご飯を食べながらこの後どうするか相談する事になった。
◇
「ちょっとどこ行ってたのよ。探したわよ。」
「あー、すまんすまん。女性が絡まれてたからつい助けに。」
「結局は絡んでた男を助けた感じになったがな。」
「なにそれどう言う事?」
「なんて言ったらわかんねー。」
「もう意味わかんないし。咲が待ってるから早く行くわよ。」
「へいへい。たく折角の部活がない休みだってのによ。」
「全くだ。」
「文句言ってないでついて来なさい。」
「「はぁ。」」
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