第9話
小鳥のさえずりと朝の日差しが心地よくて、二度寝してたら姉さんによって起こされた。朝は誘惑する物が多くて僕1人だと起きられないかも。
寝ている時に寝巻きを脱いでしまう為に朝は基本全裸なので、寝ぼけ眼の状態でされるがままに部屋着と下着を着せて貰う。そしてそのまま手を引かれて一階のリビングで朝食をとる。
「皆んな集まった所で今日の予定を確認しましょう。」
「んー。」
「朝食を食べ終わったら着替えて、薫子さんが手配した車でショッピングモールに行きたいと思います。」
「むー。」
「初めての外出だから勝手な行動をしない事。」
「うー。」
「そして買い物に必要なお金は薫子さんが管理しているので欲しい物があったら言う事。」
「ぐー。」
「紫苑聞いてる?」
「うんにゃ。」
「はぁ。後でまた説明しないと駄目ね、これは。」
姉さんが何か言ってるのに適当に返事してただけで、半分寝てて聞いていなかった。
朝食を食べ終わり薫子さんと姉さんに外着に着せ替えさせられてる途中でようやく目が覚めてきた。
しばらく経って2人が満足そうにしているので着替えが終わったみたい。姿見で確認したけどよく分からないので薫子さんが説明してくれた。僕は白のセーターにショートパンツ、黒のタイツを着けているらしい。
姉さんはパーカーとスキニーパンツを着ていると補足もあった。そして薫子さんはスーツを着ているとのこと。
これで外に出る準備が整って後は車が迎えに来るのを待つだけになった。待っている間に僕はソファーで横になってリビングでお茶を飲んでいる姉さん達の会話を聞いていた。
「今までは私だけがお世話をしていましたが、これからは一族総出でお世話する事になっています。」
「なるほどねー、だから昨日から複数の気配がするのね。」
「やはり気付いていましたか。流石ですね。」
「何もせずに見守ってるだけの感じがしたから気にしない事にしたわ。」
「それはありがとうございます。彼等は分家の者でして周辺の警護を担当しているため直接会う事は少ないと思います。」
「良からぬ事を思い付く人は沢山いるのは分かるけどね。まぁ、私達相手に何をしても無駄だけど不快な思いは余りしたくないしね。」
「そうですね。むしろ手を出してお二人の怒りを買って環境が破壊される方がよっぽど私達は怖いですよ。」
「あはは。そんな事はしないよー?」
姉さんは笑っているけど1番やりそうだな。薫子さんも違う意味で心配だけど。
そうならないようにするのが分家の人達の役目だろうな。そう思っていたら玄関のチャイムの音が聞こえた。お迎えが来たのかな?
「時間通りですね。これから会う人は私の兄なので心配ないですよ。」
「あれ?お兄さんいたんだ。」
「そういえば言ってませんでしたね。今日の車の運転と荷物持ちを担当する事になってますよ。」
「雑用みたいでなんかかわいそう。」
「そうでもありませんよ。電話で話したら凄く喜んでいましたよ、やっと2人のお世話が出来るって。」
そういうもんなのか。そういえば同性の人会うのは初めてだな。あ、今は女の子だから異性になるか。どんな人だろう、そう思いながら玄関のドアを開ける。
「お初にお目にかかります。本日の車、荷物持ちを担当する薫子の兄の楠悠人と申します。以後お見知り置きを。」
おー、薫子さんと同じ銀色の髪と青い瞳で男になった薫子みたい。ネイビーのスーツを着て髪を短く切り揃えて爽やかな感じだ。
それにしても背が高いな、僕の身長だと見上げないといけない。普通の男の人はこんなに高いのか。そして何で口を押さえて震えているんだ?喜んでるの?
「おー。薫子さんのお兄さんって感じだね。これからよろしく願いね。紫苑そろそろ上目遣いで見つめるのはやめてあげて。」
「兄さん会うのは久ぶりですね。今日はよろしく願いします。」
「お、おう。任せておけ。ショッピングモールに行くのに美人、美少女2人とか心配だからな。」
挨拶もそこそこに車に乗せて貰う。おぉー、中は広くないけど狭過ぎず丁度いい。シートはふかふかで座ると少し沈み込む感じで僕好みだ。
僕と姉さんが後ろに薫子さんは前の悠人さんの隣に座った。全員が乗り込んだ所で目的地に向けて静かに動き出した。
車の中で外の景色を眺めながら姉さんが今朝言っていた注意事項を聞いていた。
「最後にこれからは私の事はお姉ちゃんと呼ぶこと。」
「わざわざ言い換えなくても意味は同じだけど。」
「そっちの方が可愛いからいいの。」
理由がどうでも良かったので、とりあえずジト目でお姉ちゃんと呼んでみる。
「あぁ、ジト目の紫苑も可愛い。」
ダメだなこれは、何をしても可愛いと言われそう。お姉ちゃんは放っておいて外の景色でもみてよう。
◇
「ゆり様も可愛いが紫苑様の上目遣いの破壊力は半端ないな。薫子も耐えるのは大変だろ。」
「女の子になって更に威力が増していますからね。抱きしめて撫でわます事で耐えてますよ。」
「いや、それは耐えきれてないだろ…。ところで例の物は持ってきたか?」
「はい。お世話係争奪戦優勝の時に約束したお二人の成長記録はコピーして全員分ありますよ。」
「よくやった!これで一族に良い土産が出来た。お前たち兄妹だけずるいと嫉妬されてて、ちょっと困ってたんだ。」
「仕方ないですよ。私達だってお世話係になれなかったら嫉妬していましたよ。」
「それもそうだな。」
目的地に到着するまで2人の兄妹の会話が止む事は無かった。
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