第8話

姉さん達が帰って来たのと同じくして理想郷ベッドが完成した。


我ながら完璧だ、日当たりまで計算され尽くした配置となった。かなりの重労働だったので今日はもう何もしたくない。ご飯ができるまでの間ベットの上で一休みしとこう。



コンコンとドアをノックしている音で目が覚めたどうやら少し寝てたみたいだ。


「紫苑寝てるの?開けるよー。」


ベットの上で欠伸をしながら目を擦っていると、姉さんが部屋に入って来た。


「あれ?1人で起きられる様になったの?いつもだったら私がキスするまで目覚め無かったのに…。」


後半の部分は声が小さくて聞こえなかったけど、なんだか少ししょんぼりしてる。


「少し残念だけどまあいいわ。ご飯が出来たから一緒に食べましょう。」


「ん。りょーかい。」


下に降りると薫子さんが既にテーブルに座って待っていたため、軽く謝罪をして席に着いた。


皆んなが揃った所で料理を見るとお米に焼き魚、味噌汁、玉子焼き、ほうれん草のおひたしといった献立だった。日本では割とよく食べられている物の1つみたい。


「三日後に高校の受験があるから、それまでの間に色々見に出掛けに行かない?」


ご飯を食べている最中に姉さんが話しかけてきた。三日後に受験なんだ知らなかった。そうか三日後まで暇なのか。


「姉さんに任せる。」


「やった!なら明日皆んなでショッピングモールって所に行って見ましょ。」


「それでしたら車の手配をしておきます。電車の様な混雑した所は慣れてからにした方が良いかと。」


「じゃ決まりね。楽しみだわ〜♪」


いつにも増して楽しそうにしている姉さんを見ていりと何だか僕までソワソワしてきた。


そうして買い出しに行ったスーパーと近所の話題で話している内にご飯を食べ終わった。2人が片付けをしているので邪魔にならないようにリビングのソファーで横になっておく。これは決してサボりではない。


「あ、そうそう紫苑にお土産があるんだ〜。」


片付けている途中で姉さんが思い出したように1つの箱を手渡してきた。


「何と宝石がスーパーで売っていたの。すごいよね、思わず買って来ちゃった。」


スーパーって宝石が売ってるんだ。日本凄いな。感心しながら手渡された箱を開けると中から青い宝石が出てきた。んー?これは…


「姉さんこれ本物じゃないよ...。」


「え!嘘、本当に?」


姉さんが驚いていると、洗い物をしていた薫子さんがくすくすと笑っているのを見つけた。あれは知ってて教えなかったな。


「も〜!薫子さん知ってたなら教えてよ〜!」


「うふふ。紫苑様のために真剣に選んでいたのが微笑ましくてつい。」


恥ずかしかったのか真っ赤になってソファーにあるクッションで顔を隠してしまった。仕方ないので代わりに片付けを手伝うか。


片付けが終わった所で姉さんが復活したみたい。まだ少し耳が赤いけど。


「ちょっと浮かれすぎてたみたい。スーパーに本物の宝石は売ってないものなのね。」


知らなかった、と小声で呟いていた。


「なら明日本物の宝石を見に行きましょうか。確かショッピングモールの中に宝石店が有りましたので。」


「そうなの?」


「はい。お詫びと言っては何ですがお二人の気に入った物がありましたらプレゼントしますね。」


「ありがとう薫子さん。でも今度からはちゃんと教えてよね。」


「はい。分かりました。」


多分またやるだろうなぁ、薫子さんだもの。姉さんも分かってるはずだから同じ轍は踏まないだろうけど。ま、いいか見てて面白いし。


「今日はもうお風呂に入って寝るわ。紫苑、一緒にお風呂に行きましょう。」


「ほーい。」


「じゃあ、紫苑の着替えも用意してくるから先に入ってて。」


姉さんが着替えを取りにいったので先にお風呂に入る事にする。遅れて来た姉さんにいつも通り身体を洗って貰って、替わりに僕は姉さんの髪の毛を洗う。いつもと違ったのタオルじゃなくて素手で洗われたぐらいかな。


お風呂でさっぱりした後に持ってきて貰った寝巻きを着せて貰う。姉さんと色違いみたいで僕が白色、姉さんは紫色だった。確かネグリジェという名前だったはず。


「私のお下がりだから少し大きいけど大丈夫みたいね。」


「ん。ちょっと邪魔くさいけど。」


「紫苑に合う洋服が少ないから我慢してね。明日紫苑に似合う洋服をいっぱい買わなくちゃ。」


「洋服はどうでもいいかも。」


「そう言わずにせっかく可愛くなったんだから着飾りましょうよ。」


「むー、なら姉さんが選ぶ物だけ着る。」


「本当に?なら張り切って選んじゃうかな。」


あ、余計な事を言ったかもしれない。明日着せ替え人形になる可能性が大幅に上がった気がする。仕方ない、もしそうなったら、その分ご飯を豪華にして貰おう。


「それなら明日に備えてもう寝るね。お休み紫苑、薫子さん。」


「僕も寝る。」


「はい、お二人ともお休みなさい。」


薫子さんは何かの作業をやってるみたいなのでまだ起きてるみたい。いつもお世話になってるから、明日何かプレゼントできないかな?寝る前にちょっとだけ姉さんと相談してみよう。どんな所か分からないけど楽しみになってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る