第7話
《ルビを入力…》姉さんに手渡された下着を渋々着けることにする。渡されたのは飾り気のないシンプルなデザインの白いパンツだった。
おぉー、意外と手触りが良いなこれ。ぴったりと身体にフィットして違和感がない。あれ?いつの間にサイズを調べたんだろう。
ふと考えてみたら思い当たる節が多すぎた。姉さんか薫子さんのどっちかわかんないけど流石とだけ思っておこう。
「うん、思った通りぴったりね。下はそれでいいけど上は紫苑は嫌いそうよね。」
「上ってどんなの?」
こんなの、と言われて渡されたの見て首を傾げた。これは胸当てなのかな?
「こんな風に着けるのよ。これはブラジャーと言ってね胸を支えて形を整えたりするものなの。」
そう言いながら上着を脱いで実際に着けているところを見せてくれた。
ふむふむ。これは実に面倒くさそうだ。着けてあげるからと言われても断固拒否する。それに整える程の大きさはない。
「絶対に面倒がると思ったから強制はしないわ。形が崩れる事が無いから着けなくても問題ないしね。」
「それなら何で姉さんは着けてるの?」
「うーん、そうね。私は紫苑の胸より大きいから安定しなくてね。ブラを着けてる方が楽なのよ。」
まぁ、確かに姉さんの胸は僕のより一回り以上大きいから揺れるだろう。大きくなくて良かった。あれぐらいあったら絶対邪魔くさい。
「じゃ、最後にこの薫子さんお手製の貫頭衣ワンピース着けて、腰にリボンを結んで完成。」
「これなら簡単に着れるからいいでしょ。これからは家の中ではその格好でお願いね。」
真っ白な貫頭衣ワンピースと腰の淡いブルーのリボンだけというシンプルな物だけど、しっかりと可愛い要素を入れ込んでくる辺り薫子さんは本当に抜け目がないな。
「薫子さんはまだかかりそうだから、先に部屋割りを決めちゃいましょう。」
「僕は二階の洋室がいい。あのベットは魅力的。」
「絶対そう言うと思ってたわ。部屋に入った時もずっとベットを確かめてたもんね。」
あれは素晴らしいものだった。身体を預けると僅かに沈み込む感じてとても寝心地がよさそうだった。そこに持ってきたお気に入りの枕を合わせたら完璧、広さも丁度いいし言うことなしだ。
「紫苑が洋室にするなら、私は隣の和室にするわ。」
「じゃ、決まり?薫子さんはどうするの?」
「薫子さんには一階に寝室があったからそこにして貰いましょう。」
確かに一階にも寝室があったけどなんか妙に煌びやかというか何というか落ち着かない感じだったなぁ。ベットは良かったけど、それ以外が趣味に合わなかった。
「私なら何処でも構いませんよ。」
「ひっ!?。びっくりしたぁ。急に後ろから抱き着いてこないでよ。」
「すいません。部屋着を着た紫苑様が可愛くてつい。」
いつの間にか連絡を終えた薫子さんが背後から抱き着いてきたから、驚いて変な声出ちゃったよ。
唐突にスキンシップしてくる事が偶にあるのは、どうしてだろう。そして流れるように下着のチェックをした後に姉さんと目を合わせてサムズアップしているのはなんでだろう。
「そういえば薫子さんはさっきから何してたの?忙しなくしてたけど。」
「あれはこれからの生活をより円滑にするための準備と確認をしていたんです。」
「ふーん、よく分からないけどいつもありがとね。」
「くっ。いえいえ、どういたしまして。」
抱き着いている薫子さんを見上げる形でお礼を言ったら、抱きしめる力が若干強くなった。
「もう可愛いすぎるー、私も抱きしめちゃう。」
姉さんも見かねて前から抱き着いてきた。前と後ろから挟まれてもみくちゃにされてしまった。
こうなったら満足するまで放してくれないから身を委ねるしかない。今日はやけにテンションが高いなぁ。安定期を迎えたばっかりで、しかも女の子になったからかな。男の時もこういう事はあったけど未だに理由が分かんないな。
「ふぅ、堪能しました。私はこれから夕ご飯の買い出しをしてきますが、お二人はいかがなさいますか。」
「じゃあ私も薫子さんについて行くわ。この場所に来たばかりで何も知らないもの。紫苑も一緒に付いてくる?」
「僕は今からベッドメイキングと言う最重要の仕事があるから後のことは2人に任せるよ。」
2人とも揃って苦笑して帰って来るまでお留守番しといてね、と言って出かけて行った。
マイ枕よし、ベッドパッドよし、シーツよし、いざ行かん
◇ ◇ ◇
「紫苑は何も変わらないわね。少し安心したわ。」
私は始めて見る外の光景を目に焼き付けながら、隣にいる薫子さんと会話する。
「そうですね。姿が変わっても紫苑様のマイペースは変わりませんね。」
「これから高校に行ったとしても変わらないかもねー。」
薫子さんと話しながら辺りの道を覚えていく。前から外の世界について自分である程度調べていたので時々分からない事を聞きながら、近所のスーパーマーケットに向かった。
一様自分の容姿がここでは目立つことを知っているので、認識を阻害するように調整した。他人からは一目見ただけでは顔を認識できないようにしてある。紫苑はこういう細かい調整は出来ないから一緒に出かける時は大変かも。
薫子さんは銀色の髪とモデルの様な体型なので目立つが凛とした雰囲気をしているため、精々二度見されるぐらいで騒ぎにはなっていなかった。
「やっぱり初めての事ばかりでうかれてしまうわ。薫子さんにとっては15年ぶりよね。」
「毎日情報を仕入れていましたので久々という感じはしませんね。」
「流石、薫子さん用意周到ね。頼りになるわ。」
暫く歩いて目的地のスーパーに到着した。始めて見る食材や調味料もたくさん置いてあって色々物色してしまったが、私が物色している間に薫子さんは必要な物を買い揃えてくれたみたいで無事に買い物を終えた。
紫苑へのお土産も買ったし早く帰ろうと薫子さんの手を引いて帰路に就いた。
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