第5話
久々に朝早くから目が覚めた。何というかこんなに清々しい目覚めは初めてだ。何だか身体が少し軽くなった感じがする。
ふと違和感を感じて目線を下げると、以前まで無かった小さな二つの膨らみがあった。確認のために軽く揉んでみる。ふにゅ、と指が微かに埋もれる程度の大きさしかないけど、手触りが良くて少し気持ちいいかも?
しばらくの間揉んでいるうちに自分の髪が少し伸びている事に気付いた。さっきから前髪が目にかかって邪魔くさいな。後ろ髪も肩のあたりまで伸びているけど髪色は変わってないみたいだ。
取り敢えず、上半身の確認は終わったな。後は下半身だけと言ってもおっぱいがあるのとさっきから股の方が妙にすーすーしている時点で予想ができてるから驚きはなかった。
一様、確認のために下半身を見ると案の定、今まであったものが無くなっていた。少し考えたのち自分の身体の隅々まで調べていった。
僕達にとって性別は特に重要なものではなく環境や力の増幅などによって変化する事を知っていたので、すぐに変化を受け入れた。
身体を調べ終わってから鏡の前に立って改めて自分の姿を確認するとそこには漆黒の髪と紫の瞳をした一糸まとわぬ真っ白な少女が映っていた。大人になりつつある発達段階の悩ましいプロポーションで女性より少女と言った感じだった。
その姿で色んなポーズをとった後に、満足して再び布団の中に戻って二度寝を開始した。
◇
紫苑が二度寝している頃、白雪家の面々がリビングに集まっていた。菫母様は朝の珈琲を飲みながら新聞を読み、牡丹母様と薫子さんは2人で朝食の準備をして、私が食器の配膳をしていた。
「そろそろ朝食の準備が終わりそうだから紫苑を起こしに行ってくれ、もう変化は終わって……。」
と菫母様が私に声をかけている途中に一糸まとわぬ真っ白な少女がリビングに入ってきた。
「おなかすいた。」
皆が驚いて少女を見つめていると鈴を転がす様な声が聞こえて我に返った。そして少女をよく見ると眠たそうな紫の瞳と漆黒の髪の色で紫苑だということに気が付いた。菫母様以外の3人が甲高い声を出しながら紫苑に駆け寄っていった。
「しおんちゃんかわいいー、真っ白でちっちゃくってもうたまらなわー。」
「瞳の色が変わってない!やった!姉妹になっちゃったけど問題ないわ、むしろ滾る!」
「・・・・・・・・・・。」
私を含めて全員、紫苑の可愛さにノックアウトされていた。
牡丹母様は抱擁しながら撫で繰り回し、私は本音が隠せずに駄々洩れで人に見せられない様な顔をしている事を自覚していた。
薫子さんは駆け寄った時には声を上げていたけど、紫苑の身体を見るや否や無言でバスト、ウエスト、ヒップの順に触って確認し、メモを書き込んだのちに頭の上から足の先まで見た後一瞬だけ恍惚な顔をして朝食の準備に戻っていった。
紫苑は欠伸をかきながらされるがままであった。
私達がはしゃいで紫苑を揉みくちゃにしてると菫母様が声をかけた。
「2人共いい加減に紫苑を解放しろ、それと紫苑は今度からは何か服を着てこい。これから外の世界に出るんだから家だといって全裸でうろつくのは駄目だ。」
「服着るのめんどくさい。邪魔。」
「ならせめて全裸は自分の部屋だけにして、それ以外の場所は下着だけでもいいから着けてくれ。ゆり、紫苑の事頼んだぞ。」
反射的にイエスマムと非常に残念な返事をしてしまったので、ため息をつかれた。
朝から慌ただしかったが無事に朝食を済ました後に、紫苑と私に行きたい高校について聞かれた。
「うーん、私は紫苑となら何処でもいいけど強いて言うなら制服が可愛いところかしら。」
「ご飯がおいしいところ。後は寝れる場所。絵が描ければ尚よし。」
紫苑は高校に求めるものが根本的間違っている気がする。それは家で我慢してほしいな。
「寝る場所は外すとして制服が可愛くてご飯が美味しく、絵が描ける所か・・・。」
少し考えた後に良さそうな高校に思い当たったみたいである高校を提案してきた。
「日本という国に猫柳高校という中高一貫校があってな、そこの制服が可愛いと聞く。特徴を持った人も多いため学校設備も充実している様だ。それに確か編入試験があったはずだ。日本のご飯は美味いからな、四季もはっきりしていて絵の題材にもなると思うぞ。」
じゃそこにする、と紫苑があっさりと決めてしまった為にこの会話が終了してしまった。
簡単に通う高校が決まってしまったので、今から日本の代表と学園長にあってくると言ってお母様達は出かけていった。やる事が無くなってしまったのでこれまでの話を紫苑に教える事にした。
「先ずは基本から行きましょう。私たちは普通の精霊とは違い、環境によって生まれたものではないわ。お母様達によって生まれてきたの。精霊どうしで子供ができるのは、まずありえなんだけどね。でもそのおかげで私たちは使命?みたいなのが無いらしくて自由に暮らせるみたいなの。」
「だけどずっとこの場所に住むことは難しくてね、これ以上維持することができないから外の世界に出ることになったの。そこで丁度よく同年代人々が集まる高校に行ってみようってことになってね。高校に通いながら色々勉強しつつ、人々と交流を深めるのが目的よ。」
こんなものかしらと話を区切って次は紫苑に尋ねてみた。
「紫苑は外の世界で何がしたい?お姉ちゃんと何がしたい?」
「ご飯、睡眠、お絵かき、姉さんと一緒ならそれでいい。」
と簡潔に返事が返ってきた。もう嬉しい事を言ってくれるじゃない、キスしちゃう。今日は可愛いくなった紫苑を沢山可愛がってあげようと、抱きかかえて自分の部屋に連れていった。
この後、牡丹と菫が帰って来るまで2人は部屋から出てくることは無かった。
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