第2話
紫苑は私という存在が始めて生まれた時に、最初に瞳に映した存在だった。その時に見た光景は今でも鮮明に覚えているわ。私はその綺麗な紫の瞳の虜になってしまった。それと同時に私の半身であること理解した。
私たち双子はお母様達の力を半分ずつ貰っていた。その特徴として私は銀色の髪と緋色の瞳、紫苑は漆黒で艶やかな髪、そして母親達の瞳の色を混ぜた様な紫の瞳を受け継いでいた。
ただ問題だったのは私は陽の力を受け継いでいたのに対して、紫苑は陰の力を受け継いでいたことだ。
精霊とは環境を調整するための存在であり、そのための力を持っている。陽の力は環境のバランスを調整するための物であり、陰の力はその環境を破壊するための力でる。精霊達は何度もその破壊と調整によって多くの生物が住むことの出来る環境を創ってきた。
そのため私たち双子は精霊としての力が半分しかないために、互いに補完し合いながら力が均衡するまでの間、暴走しないようにとお母様達が私達だけの世界を創り出した。
私は紫苑に比べて大分早く安定期を迎えた。安定期を迎えた事により本来の姿に変わってしまった。変化と言っても髪の色が紫苑と同じ漆黒になり、瞳の色がサファイアの様な青になっただけで身体の変化は見られなかった。ただ紫苑と同じ髪の色になった事がとてもとても嬉しかった。
私が安定期を迎えた時と同じくしてお手伝いさんとして楠薫子さんがやってきた。なんでも代々精霊に仕えてきた者らしい、確かエルフの末裔だとかなんとか。よくは知らない。
薫子さんが来てから様々な家事を教えて貰った。紫苑をお世話するために料理には特に力を入れて覚えたわ。
もともと精霊には世界からエネルギーをもらっているために食事の必要はないのだけれど、味気ないものなので趣向品として食べていたのが今では習慣化してしまった。特に甘味は最高ね。
紫苑は基本的に寝ているか、私と一緒に話をしているか、趣味の絵を描いているか、などであったが暴走をしないように寝ている時間の方が多かった。
ただ紫苑の性格からして別に生活に不満はなかったみたいで、むしろ喜々として布団の中で寝ていた気がする。
この15年間で力の均衡がとれて、安定期を迎えるまであと少しの所でお母様達から外の世界で高校に通ってみない?と言われて行くと即答した。
薫子さんとの話で聞いていていた学園生活を紫苑と一緒に送れるとか、もう考えただけで頬が緩むわ。後、外の世界にはもともと興味があったから一石二鳥って感じね。
◇
「紫苑ー、もう朝食ができるからそろそろ起きてくれない?」
そう言いながら部屋の中に入ると布団の上には白い繭の様な物があった。
んー、これは何だろう。安定期に入ったのかな?自分ではよく分からなかったからなぁ。他人から見たらこんな風にみえるのかな?
とりあえず薫子さんとお母様達に連絡しないと。急いで朝食の準備をしている薫子さんのもとに向かった。
「薫子さーん、お母様達に連絡してもらえる?紫苑がたぶん安定期に入ったと思うんだけど私にはよく分からなくて。」
「ようやく紫苑様も安定期を迎えたのですね、了解しました。大至急奥様達に連絡してきますので、ゆり様は朝食でも食べてお待ちください。」
「ありがとう薫子さん、後はよろしくお願いね。」
薫子さんが四角い物をポケットから取り出して連絡をしている様子を眺めながら朝食を口に運ぶ。そうして程なくして連絡を終えた薫子さんと一緒に紫苑がどの様な姿になるのかを話し合いながら、お母様達が来るのを待っていた。
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