サードステージ(番外編)
遠方よりの書簡
突然軍医のリオネに呼び出された。
そういえばあの日以来3日間放置している。
何か絡んでくるのかと構えて医務室へ入ったのだが、応対は素っ気ない。
「よく来たな。要件はコレだ」
デスクの上の書簡を俺に見せる。
「差し出し人はp.w.カンパニーだな。律儀にも送ってきたぞ。ちなみに発信元住所は地球だな」
地球。アルマ星間連合外で唯一親交のある星だと聞いている。距離は約150光年だとか。そんなところからどうやって書簡を届けるのだろうか。
「お前宛だしな。まだ開封してないんだが、私にも見せろ」
相変わらず高慢な物言いだ。俺宛の書簡を俺よりも早く入手しているのも気になるところだが、俺も内容が知りたいので、黙って脇にあった丸椅子に座る。
封筒を開け中を確認する。
文章は我が国の公用語で丁寧に手書きされていた。
◇◇◇
勇敢なるわが友、ハーゲン少尉へ
先の実験の成功には感謝している。
早速だが貴殿の依頼についての報告をする。
残念だが、アルゴルについては未だ詳細は掴めていない。
以下、判明した事実を述べる。
・リアム商会を運営する幹部の一人。
・リアム商会は主に武器を扱う。モンスターや魔法装置も取り扱い商品に含まれる。
・彼は地球人ではなく、レーザ星系出身である可能性が高い。
・レーザ星系の代表的な人種である爬虫類型ではない。また、貴殿のような獣人でもなく、人間でもない。一人に見えるのだが環形動物の集合体だと推測される。
・空間を自在に転移する能力を持つ。これは魔法なのか、科学技術を利用しているのか判明していない。
・高度な知性を持つ。これは環形動物単独でそうなのか、それとも集合することで知性を獲得しているのかは不明。
・レーザ星系の宇宙船を使用していることは確認している。
・例の魔石は新兵器の開発に係っている。詳細は不明だが、鋼鉄人形を模倣し発展させた超兵器だと推測される。
以上、アルゴルについての調査結果である。尚、リアム商会とわが社とは実験の協力者として契約している。モンスターの供給、および撃破方法の研究において共通の利益があり契約の終了予定はない。
以下、アルゴルが貴殿に係る理由について判明した事実を述べる。
・貴殿の鋼鉄人形の出力は通常の3倍程度だと見積もられている。千年前の伝説の名機の心臓が使用されている可能性が指摘されている。
・その心臓は他では入手できない。ゆえに、貴殿の人形を強奪しその心臓を入手するのが目的だったと思われる。
アルゴルの近況について判明した事実を述べる。
・某所で異世界百足を改良し、数百匹繁殖させていたことが判明した。それが一昨日姿を消している。近日中に貴殿を襲う計画があると推測される。
[改良型異世界百足の特徴]
・非常に大型で、全長は15m~25m、体重は2t~5t。
・表皮は硬く小口径の銃やナイフでは致命傷を与えられない。
・暗闇を好み光を嫌う。
・火と乾燥に弱い。
・魔法耐性に劣る。
・水は好物だが水中では窒息死する。
・肉食で人を好んで捕食する。
・神経毒を持ち噛まれると即死する。
[推奨装備]
・火炎放射器
・レーザーブラスター
・メーザー砲
・銃火器を使用する場合、弾種は焼夷弾、徹甲焼夷弾、ナパーム弾を推奨。徹甲弾、榴弾は効果が薄い。
・火炎系魔法術式は特に有効。
報告は以上だ。
これだけの情報をくれてやったのだ。
必ず生き残れ。
また会える日を楽しみにしている。
p.w.カンパニー オルガノ・ハナダ
◇◇◇
「これ本当かな?ここ襲うって話。それに神経毒って嘘でしょ?ムカデに噛まれて死んだ人なんていないのに」
リオネは不安げに俺を見つめてくる。
「改良したんだろう。毒腺は念入りにな。それと、襲撃は今夜だ」
「どうしてわかるの?」
「昨夜来なかったからな」
「そんな理由?」
「ああ、こっちに準備する時間を与えるハズが無い。当然だ」
大量の巨大な毒虫。入念に準備してる暇はない。援軍を呼んだとしても到着は明日以降だ。最低一晩持ちこたえなくてはいけない。
俺達はカンパニーからの書簡を手に司令官のもとへ向かった。
西の空は赤く染まっていた。
もうすぐ日が暮れる。戦いの準備などする時間はなかった。
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