第32話 サボテンに咲く小さな花。

 いつまでもコントで使うようなタライでは酷いなと思い、大広間にバスタブを新調した。西洋で使われる4つ足のクラシカルなバスタブである。8万円と安かったがデザインが気に入ったので即買いした。水の管理が面倒なので、リアルの空間では水を入れずにモンスタースポットに入ってから入れることにする。大広間は畳だしな…。


 『6時まで5秒前、4、3、2、1、』


 『ダイブ確認。』

 「MISAみさ。OKだ。」


 ダイブと同時にMISAみさは捜索。…マネキンに紫色のショートカットの髪が増えた。

 スイートクイーンビーのダリアはスキンシップと産卵。

 俺は人魚のナデシコをバスタブに移し、1本12リットル5000円のボトルの水を10本入れてやった。めちゃくちゃ喜んだ。

 猫スプレイヤーのミィは座布団に丸まって寝始めた…。お前、使用人ってこと忘れてるだろ!


 『マスター。モンスターは見えませんが、外は砂漠です。』

 「前回、吹雪だったしな。そういうこともあるんだろ。」

 『風呂場に出現したクリスタルについて確認しに行ってもよろしいでしょうか?』

 「ん?あー。そんなのもあったなー。よし。一緒に行こう。」

 

 風呂場にあった2mくらいの宙に浮くクリスタルは6角柱で、どことなく地下にあった建造物を思わせる造りだった。


 ピー…

 クリスタルは俺の脳に直接、語りかけてきた。

 「あぁぁんだと?」


 ゲシゲシ

 『マスター!おやめください!どうしてクリスタルを蹴りだしたんですか?!』

 「このクリスタルがな。俺の事を無職です。転職をお勧めしますって言ってきやがったんだよ!俺は成金かねもちなんだよ!働かなくていいんだよ!」

 ゲシゲシ

 『マスター。MISAみさが調査しますので、どうか、落ち着いてください。』

 「ふん。」


 ピー…


 暫くするとMISAみさの手に小さな水晶の付いたロッドが握られていた。

 『なるほど。これは職業を設定するクリスタルです。戦士。魔術師。回術師。盗掘師。から選べ、魔術師に転職したら、初回特典としてロッドとファイヤアローの魔法をいただきました。マスターも設定することをお勧めします。』

 大丈夫かMISAみさ…藁人形からマネキン、魔術師って…どんどん胡散臭くなってるぞ。いや、藁人形よりはましか?

 「あー、俺はいい、あんなお節介クリスタル。みんなの所に戻ろう。」


 ビービー


 MISAみさの持っているタブレットから警告音がなり響く。


 直後にバン!と玄関のほうから音が響いたので、廊下に出て玄関を覗くと扉が砕け棍棒をもったサボテンが侵入していた。


 『ここは任せてください。初回特典の効果をお見せします。』

 「お、おう。」

 え?え?なんかの勧誘にひっかっかった?

 『≪ファイヤアロー≫』


 MISAみさの周りに数百本の炎の矢が現れて、サボテンに射出される。


 ズドドドドドドドドド!!!


 ―― ムービングカクタスを倒した ――

 ―― カクタスを手に入れた ――


 俺の手には鉢に入ったサボテンがあり、サボテンに咲く小さな花にほっこりとした。

 「MISAみさ。どこかに飾っておいてくれ。」

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