第26話 酒の失敗。

 いい酒がネットオークションで手に入った。モンスタースポットも考えてみれば役に立つ。油断すると死ぬだろうが、1度手に入った酒が無限に飲める。


 純米大吟醸ぶった15000円。兵庫米、岡山米になんとインド米をブレンドしてシルクロードを思わせる味わいを再現している。

 楽しみだ。


 日本酒と塩とか渋い飲み方はできないので、そのほかにもビールやリキュールを用意している。カルアミルクとカシスオレンジは外せない。


 「あ。枝豆忘れた。」

 『そら豆で代替えしましょうか?』

 「いや、無理に用意しなくていい。あいつらが野菜っぽいモノを食べてる姿が想像できないしな。俺は貴賓室で軽く始めている。」


 …その油断が、大惨事であった。


 『6時まで5秒前、4、3、2、1、』


 『ダイブ確認。』

 「MISAみさ。OKだ。」


 MISAみさの捜索で、裏の林にモンスターの群れがいることが分かったが、動きはみられない。クイーンビーのダリアとのスキンシップを終えてから、人魚のナデシコを抱っこして水を張っておいたタライに移す。MISAみさと猫スプレイヤーは何故か前日の浴衣をそのまま着ている。


 『マスター。風呂場に宙に浮くクリスタルが出現しています。どういたしましょうか?』

 「放っておけ。今日は酒を飲む日だ。」

 『了解しました。』


 「それじゃ。乾杯するぞ!グラスの使い方はもう分かるな。カンパーイ!」

 シャァ!

 ぴぃ!

 にゃん!


 ぐびぐび

 ぱくぱく

 もぐもぐ


 シャァ!

 ぴぃ!

 にゃん!


 ぐびぐび

 ぱくぱく

 もぐもぐ


 …飲み会は、楽しく進んで行く。すべてはバカ猫が始まりだった。


 「みさも飲むにゃん!」

 お酒をいだり料理を取り分けたりしていたMISAみさのワラに日本酒の瓶をぶっ刺した。


 『不要です。飲めませ、飲めま、めまめまめ?うふふ。』

 「ん?MISAみさどうした?」


 うふふうふうと笑いながら、俺にまたがりズボンを脱がしていく。

 「どうした?!やめ…」

 『動かないでください。』


 ―― ソウルフィアーが発動した ――


 ゾクリと背中に寒気が走り体が動かない。

 な、、なんだ?!


 俺の上でMISAみさが上下する。

 ワラの感触が気持ちいい。だが、頭がドローンで着物をはだけさせた藁人形。しかも、胸は泥でできている。認めたくない。


 だが、やはり気持ちが…


 プス


 「痛っぅぅ!!!」

 ワラが尿道に突き刺さった。俺の下半身で上下するたびに突き刺さったワラが、奥へ奥へと進行する。

 「ぁぁて…MISAみさ!とまぁ…」


 痛い!痛すぎる!止めようにも体が動かない!口も思うようにまわらない!誰か俺を助けろ!ダリアは!酩酊して飛んで天井にぶつかっている。ナデシコは!酒瓶をだきしめてニタニタしている。だ、ダメだ…。


 ジャジャジャジャーン!!!

 『マスター。ムードは大事。うふふ。音楽かけました。うふふ。』

 オレん家中に響き渡る。


 ドドドドドドドドド!!!!

 ドシン!ドスン!


 まずいぞ!裏の林のモンスターが音で暴れだした!


 「うふふ。楽しい。うふふ。今、貴賓室に呼びますからね。うふふ。」

 呼ぶ?


 ドドドドドドドドド!!!!

 鳴り響く音楽が地響きを操るように、貴賓室へと導く。


 ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!

 ドカァァァン!!


 貴賓室の扉に大木を打ち付けるような音が響き扉が粉砕し、黄金に輝く羊がなだれ込んでくる。ドドドドドドドドドと入ってきた羊は凶暴さはなく貴賓室にウールの塊でぎゅうぎゅう状態だ。


 「にゃん!これは珍しいにゃん!ゴールドシープにゃん!毛を狩るにゃん!」

 チョキチョキ!チョキチョキ!チョキチョキ!


 そんなことよりー!痛てぇ!俺の上でいつまで暴れてんだ!このままだと俺の尿道が死ぬ!死ぬー!


 『うふふ。うふふふふふふ。』


 ―― ゴールドシープの討伐に失敗した ――

 ―― 部位破壊ボーナスの1200kgのゴールドウールを手に入れた ――


 痛みから解放された俺は盛大にパンツを汚したが、それ以上の問題が発生した。


 「気にしてないからな。出てこい。な。」

 MISAみさがドローンなどの端末を引き連れて、サーバールームに引きこもってしまった。高感情AI…たかが、酒の失敗くらいでめんどくせぇ。


 …酒を出すのは、もう辞めよう。

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