第13話 ぴちぴち。

 昨日も不動産屋たぬきが家にきて、満面の笑みで言いました「3億8千万で引き取りますよ。お客様だから特別・・ですよ。」…だ~か~ら、5億つってんだろ!

 無許可で売り出して買い手でもついたんじゃねーだろうな。


 「MISAみさ。とびきり品質の悪い粗茶を買っておいてくれ。」

 『マスター。了解しました。』


 昨日の不愉快なことなどどうでもいい。今日の方針だ。

 地下の水たまりを捜索したいが、必要なダイビングツールが届くまでにしばらくかかる。俺は地下にコレ・・を終わらせる何かがあるとにらんでいる。


 「安全に戦える銃のような武器はないものだろうか。」

 『マスター。火炎放射器はもう使用しないのですか?』

 「あー。あれか。あれは威力はあるんだが、火事に巻き込まれて死にかねん。」

 口にはしないが、元に戻るとはいえ自分の家が全焼するのは辛いものがあった。


 『では。ただ尖っているものはどうでしょうか。尖っているだけでしたら、銃刀法違反になりません。』

 「なるほど。それいいな!確かネットで浪漫道楽堂ろまんどうらくどうが…ブツ…ブツ…」

 『マスター。思考中に申し訳ございません。6時まで5秒前、4、3、2、1、』


 『ダイブ。通信確認。』

 「MISAみさ。OKだ。」


 クイーンビーのダリアが俺の頭をわしゃわしゃした後にソファーに卵を産み始める。

 「…。まぁ、スキンシップだしな。悪い気はしない。」


 『1体のモンスターを発見しました。ゆっくりと庭で動いています。』

 「わかった。」


 俺はダリアと蜂を連れて、庭に行く。


 ぴちぴち


 ぴちぴち


 なんて間抜けな光景だろう。陸に上がった魚だ。まぁ、正確には人魚だ。緑色の髪に真っ黒な瞳、えらのような耳に流れるような肢体、胸は水圧を考慮してなのか、少し残念、下半身は魚っぽい何かだ。


 「ぴぃーーー!」


 威嚇している声も、地上を想定していないのだろう。よわよわしい。


 ブブッブブッ!!!!


 ズガガガッッッッッッ!!!!バシャン!!


 蜂が風の刃を放ち攻撃すると、人魚は水の壁を使って防ごうとしているが、水の壁は弱々しく簡単に粉砕されて何度も何度も弾き飛ばされ、人魚の体に傷が増えていく。


 「ダリア。やめさせろ。こいつは使える。」


 「シャァ。」


 ダリアは俺をいぶかしげに見ている感じだが、蜂たちの攻撃を止めてくれた。俺はゆっくりと人魚に近づいていく。ある程度、近づくと人魚はぴぴぃぴぴぴぃと威嚇が強くなったので、その場でしゃがみ込み、人魚の方にビーフジャーキーをフリフリとする。。

 「豚人間の…いや、ビーフジャーキーだ。これを食べたら、少しは回復するかもしれない。ほら。」

 ダリアだって言葉が分からないのに、こんなに意図を組んでくれるんだ。人魚だってわかろうと努力するはずだ。…そもそも、ジャーキーを食うのか疑問だが。


 しばらく視線が交錯したあと、ゆっくりと、ゆっくりと、這いずりながら近づいてくる。ちらちらと俺の様子を伺いながらジャーキーに口元を近づけるとぱくりと俺の指ごとくわえて咀嚼そしゃくする。


 もぐもご


 べちょべちょになった指を引き抜いて、ハンカチで拭いさらにジャーキーを差し出すと同じように指ごとぱくりとくわえて咀嚼そしゃくする。思わず舌打ちが出そうになったがこらえる。


 「いいか。今からお前を水のあるところに連れていく。暴れるなよ。」


 ゆっくりと人魚をお姫様抱っこして持ち上げる。

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