第12話 肉棒を口に与え続けた。

 昨日の豚人間との戦闘後、貴賓室を調べた。なぜ、調べたのかというと。豚人間へボウガンを射撃する際に確かに壺の傍に階段があった。リアルの空間にはそんなモノあったら、当の昔に気づいている。当然、何もなかった。ところで…。


 「MISAみさ。で、コレらはなんだ?」

 『マスター。昨日任された。剣と肉になります。』

 「肉は燻製?剣は銃刀法違反にならないように10cmに切り刻んだってことか?」

 『はい。薬草のように回復することも考えられますので、肉は長期保存できるよう燻製にし食べやすい棒状にカットしました。まだ、一部ですが美味しく出来ています。』

 「豚人間・・の肉を…。」

 そう言う意味じゃなくて、剣も肉も処分・・しろと言う意味だったんだが。

 『剣の方ですが、蜂蜜と同様にコレ・・の空間に干渉でき攻撃できる可能性がありますので、ドローンに設置してマスターをフォローします。』

 「それは良いアイデアだ。俺が命令を出すまでは攻撃するなよ。刺激してはならないモンスターも出るからな。」

 『了解しました。ところで、マスター。今日は貴賓室で待機するのですか?』

 「ああ。どうしても、階段が気になる。だが、この部屋は袋小路だからな、廊下の確認は迅速にしてくれ。」

 『了解しました。6時まで5秒前、4、3、2、1、』


 『ダイブ。通信確認。』

 「MISAみさ。OKだ。」


 クイーンビーのダリアが俺の頭をわしゃわしゃした後にソファーに卵を産み始める。

 「…。俺の頭を触るのはルーチンか?」


 部屋を見回すと壺のそばにやはり。階段ができている・・・・


 「確かに確認はしたかったが、実際に存在しない階段があると中に入るのに躊躇してしまうな…。」

 『マスター。屋内ではモンスターの反応を観測できませんでした。引き続き屋外を探索します。』

 「わかった。」


 卵から蜂がかえるのを見守ったあと、階段を下りる覚悟を決める。


 どんな衝撃でも壊れない7万円の懐中電灯を暗闇に向けながら、階段を一歩一歩降りていく。だが、唐突にその先へは行けなくなった。なぜなら、階段の途中から一面、水に沈んでいたからだ。濡れてない階段まで降りて、周りをライトで照らすが広すぎてライトの光が奥に届かない。


 「別のアプローチを考える必要があるな。」


 次の対策を考えながら、俺が貴賓室へと戻ると通信が入った。

 『…。…スター。マスター。』

 「どうした?」

 『いえ。マスターが階段を降りるとすぐに通信ができなくなりましたので、ドローンを向かわせようとしましたが、ドローンではリアルの空間側にない階段に入ることができなかったので、呼びかけを行っておりました。』

 「そうか。この階段はさらに別の空間なのかもしれないな。で、モンスターはいたか?」

 『屋内、屋外ともに見つかりません。現在、車庫、裏の林を捜索しています。』

 「いや。無理に探さないでいい。藪をつついて蛇を出す必要はない。」

 『了解しました。室内の巡回にとどめます。』


 椅子に座っている俺の回りを、ダリアが構ってほしそうに飛び回っているので、手を取って俺の足の上に座らせる。

 「そうだ。燻製があった。食うか?」

 燻製をダリアの口元に持ってくると、ぱくりと加えてモグモグと食べた。ほとんど表情がないダリアだが、若干、笑顔になった気がする。


 もぐもぐ

 「まだまだ、あるぞ。」

 ダリアの咀嚼が終わるのを待って、口に燻製を差し出すと面白いように食べてくれるので、時間を忘れて燻製を与え続けた。


 ―― スライムの討伐に失敗した ――


 「ん。リアルの空間に戻ったか。ところで、スライムってなんだ?」

 『粘性のある液体です。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る