第11話 太いモノが突き破る。

 3体の豚人間を庭で倒したが、リアルの空間に戻されない。


 「MISAみさ。モンスターは、まだいるのか?」

 『はい。貴賓室に先ほどより少し大きめの個体がいます。』


 俺は催涙スプレーが充満しているリビングを避けて、玄関に周り廊下の突き当りにある貴賓室の前にやって来る。貴賓室の扉を開け放ちボウガンをダダダ!と射出する。


 カカカン!


 先ほどより一回り大きな豚人間が体から足まで隠れる巨大な鉄の盾で、すべての矢を受け止める。盾の横から爛々と赤く輝く目を覗かせ、盾を前にして俺に向かって突撃してくる。


 ズドッ―ン!!!!


 後方に飛び退くが、豚人間の突撃は壁をぐしゃぐしゃに壊して、俺をゴムボールのように弾き飛ばす。廊下のあちこちにぶつかりながら、俺の体は玄関の外に転げ出てようやく止まる。くらくらする頭を抑えながら、膝立ちに廊下の先を見る。


 豚人間は、フゴッフゴッと大きな盾を持って廊下に出ようとするが、盾が大き過ぎて廊下に出れないでいる。ポケットから少し干からびてしまっている薬草を取り出してまるごと口に突っ込む。まえに葉を1枚食べたときの比ではない程の苦さが口に広がるが、体の痛みが引いていき感覚が戻ってくる。


 豚人間は盾を捨て廊下に出るが、体の大きな豚人間にとって廊下は窮屈でイライラしながら突き進んでくる。俺は背中に背負っている日本刀を抜こうとするが、ひしゃげてさやから抜けず、さやごと構える。

 玄関からでた豚人間は、俺の構えた日本刀がおもちゃに見えるほどの巨大な剣を腰から抜き放ち、上段に構え…。


 ザクッ。


 ようとするが、玄関上の屋根に突き刺さり引っかかる。

 冗談・・じゃないあんな剣振られてたまるか!


 「≪ファイヤータックル≫」


 カッコイイセリフを叫ぶ余裕もなく、日本刀を投げ捨て豚人間にタックルをかまして火だるまにする。


 豚人間を吹っ飛ばし家の壁まで叩き付けて剣を手放させることに成功する。このまま燃えろ!と期待するが、茶色の闘気をまとうと砂塵を噴出して火がかき消されてしまう。更に茶色の闘気をまとった手をこちらに突き出してくる。とっさにこちらも手を突き出す。


 「≪ブヒィィウィウゥ≫」

 「≪エアースラッシュ≫」


 砂塵の竜巻と風の刃が衝突し消滅する。


 「ブヒィ。」


 少しはやるな。そんな目で俺を見る。2m50cmはありそうなに認められた気がして、こぶしが熱くなるのを感じる。手持ちの武器はなし。玄関周りには仕掛けもなし。たった一つ効いたタックルに男としてのすべてをかけるのもありかと、姿勢を低くして構える。目と目が合う。全力だ!全力で行く!


 スタッ


 上空から豚人間の頭にカエルのような姿勢でダリアが着地する。


 ドスッ


 ダリアの尻から生えている腹から、豚人間の兜を突き破り、頭蓋骨を突き破り、鼻の穴から腕の太さほどの針が突きだす。


 ズシィィィンと豚人間が崩れ落ちる。


 ―― オークソルジャーを倒した ――

 ―― 3体のオークを倒した ――

 ―― 山村太郎はLV6に成長した ――

 ―― 山村太郎はサンドストームを覚えた ――

 ―― グレートソードを手に入れた ――

 ―― 300kgの豚肉を手に入れた ――


 「おもっ!」


 あまりの重さに両手からドサッと剣と肉が落ちる。


 「俺はアホか。何を豚に命はろうとしてたんだ。それに剣って…銃刀法違反じゃねーか。MISAみさ。剣と肉の扱いは任せる。」

 『マスター。了解しました。』

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