第9話 従属に失敗した。
分かったことが2つある。1つは
「
ザザッ…『マスター。音声クリア。』ザザッ…
よし。
「人じゃないセーフだ。」
根拠のない判定をして、
ザザッ…『廊下、異常なし、トイレ、異常なし、玄関、異常なし、』ザザッ…
俺にすり寄ってきた蜂の親玉に質問を投げかける。
「お前、名前はあるのか?」
無表情に俺の横でホバリングしている。
「ないと不便だよな。つけてもいいか?」
無表情に俺の横でホバリングしている。
「ダリアなんてどうだ?」
―― クイーンビーは巣の確保と餌の供給を要求した ――
「いや。無理だろ。俺も毎回、
―― クイーンビーの従属に失敗した ――
「なんで、俺、
蜂の親玉は、かなり痛めにガシガシと嚙みついてくる。
「痛い!痛いって!
ザザッ…『マスター。名前で呼んでほしいのでは?』ザザッ…
「名前?
名前を呼んで顔を見つめると、ダリアは嬉しそうに優しく嚙みついてきた。
「いや。断られたよな?なんか、俺、フラレたみたいになったよな?
ザザッ…『私も
いや、
ズドォン!!!
ガシャガシャガシャン!パリーン!カラカラカラーン…
キッチンの天井から巨大な柱が突き出てきて、鍋や食器が散乱する。俺は目を見開いてキッチンの惨状を凝視する。巨大な柱は少しづつ持ち上がっていく。柱の底の形で柱に見ていたものが巨大な足だとわかった。足の裏からペラリと潰れた巨大な蜂が落ちる。
ごくり
ホバリングするダリアの手を引き、トイレにこもり息を殺す。まただ、まただ、またとんでもない化け物だ。
「
ザザッ…『マスター。了解しました。』ザザッ…
車庫から激しい音楽が流れると、ギシリ、ギシリと屋根の上の何かが移動して行く。
その後の俺は、ただ、ただ、脅威が去るのをまつ。
「ジッとしてくれ。頼む、ダリア。」
ダリアが動こうと羽を動かすたびに抱きしめたり、頭をなでたりしてなだめる。ダリアは状況がわかっていないのか甘嚙みしてくる。怪物に察知されてはいけないこの状況、ダリアが喋れないことだけが唯一の救いだ。
ただ、車庫を潰していた怪物の時と違って、時間はあっという間に過ぎていった。
―― ギガントピテクスの討伐に失敗した ――
誰かいてくれるだけで、誰か寄り添ってくれるだけで時間とはこうも変わるのかと思わされた。
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