第2話 震える体は怒りに満ち溢れていた。

 昨日は観賞用に居間に飾ってある日本刀を持って、午前6時から家の部屋をひとつづつ確認したところ、冷蔵庫を開いてボリボリと野菜を喰らっている緑色の子供サイズのじじぃがいたので後ろからけさ切りにした。めちゃくちゃ、嫌な感覚だったが俺の家に石斧を持った緑色の生物がいる方が明らかに悪い。

 その後MISAみさに録画映像をチェックさせたところ、3日前に寝室で12分間、俺が消えているのがコレ・・の最初らしい。3日前…たしか寝ているところに、何か液体のようなものが顔にへばりついたのを寝ぼけながら毛布で拭き取った…気がする。


 「くそ。今日は見つからないな。今日は出ないのか?出ないほうがいいが。あぁ、喉が乾いたな…。」


 飲み物を飲もうと冷蔵庫を開けると赤色の複眼と目が合った。

 冷蔵庫の中にはスイカを三つ並べたような巨大な蜂が、1瓶1800円の野菜ジュースをすすっていた。


 「む、虫…。ひぃぃぃ!!」


 ブブッブブッブブッブブッ…


 食事を邪魔された巨大な蜂は、震える体で怒りに満ち溢れていた。


 ブブッブブッ!!!!


 巨大な蜂は牙を剥きだして、俺に飛びかかるってくるが、とっさに日本刀を顔の前に持ってきたため、ガチィン!っとぶつかり合い難を逃れたが、衝撃で俺は尻餅をついてしまう。巨大な蜂はキッチンの天井を旋回し俺の方を向いてホバリングしはじめる。

 巨大な蜂がチリチリとする緑色の闘気に包まれていく。


 虫にビビッてる場合じゃない。なんか、なんか、ヤバイ気がする。とっさに俺はリビングの方に転げるように逃げ出す。


 ズガガガッッッッッッ!!!!


 振り返って今まで俺のいたところを見ると、床が何かに切り裂かれたようにいくつもの裂け目が走っている。


 「マ、マママ、マジかよ…。魔法?だよな…、や、やってられるか!こんな気持ち悪い家!売っぱらってやる!」


 俺は日本刀を投げ捨て、リビングを出て廊下を走って玄関に向かう。


 ブブッブブッ!!!!


 巨大な蜂も俺を追って廊下に出てくる。だが、俺の目の前には玄関扉!外に逃げれば何とでもなる!バッと玄関扉をあけ外にでると、真っ白な壁で家がまるごと包まれていた。


 「は?は?はぁ~~~?!」


 ゆっくり振り返ると、巨大な蜂はゆらゆらと緑色の闘気を溜めていた。


 「くそ!くそ!くそ!成功してこれからって時に!虫のエサかよ!ちくしょぉぉぉおーーー!」


 、、、いや、、、まて、よ、、


 「うぉっぉぉおおおお!!!」


 魔法を使われる前に全力で家の壁沿いに走り出す。


 ズガガガッッッッッッ!!!!


 「痛っつ!!」


 風の刃が尻をかすめて鈍い痛みが走ったが、構わずに車庫に向かって走り続ける。車庫の中には4WDの如何にもな車がある。ズボンからキーを取り出しロックを解除する。


 ピピッ


 車に乗り込みエンジンをかける。


 ブルン、ブルン、ブロロロロォォォ!


 追ってきた巨大な蜂めがけて急発進させる。


 「死にやがれぇぇぇ!!!」


 ガン!


 「どうだ!1千万した4WDの威力は!!」


 車から降りて、巨大な蜂を確認するとピクピクンとまだ生きている。ズキッと尻に痛みが走ったので確認するとべったりと血に染まっていた。


 「てめぇ…。もう、36だぞ!!怪我してもすぐには治らねぇんだぞ!!!」


 俺は車の後部からレンチを取り出すと、巨大な蜂を殴打する。


 ボコン!バキ!バキ!バン!


 「なめるな!なめるな!この家は5億したんだぞ!なんで、わけの分からないおまえらのせいで俺が家を売らなければならねぇーんだよ!!」


 バン!バン!ガン!バキ!


 「あ?!今度は何出すんだよ!人参のあとには、こ汚い布!お前は蜂蜜だろ?!あ?!あ?!」


 ドカ!


 ―― ジャイアントビーを倒した ――

 ―― 山村太郎はLV3に成長した ――

 ―― 山村太郎はエアースラッシュを覚えた ――

 ―― はちみつを手に入れた ――


 巨大な蜂が消えたあとに、俺の手には瓶詰の蜂蜜が握られていた。


 「くそっ…。マジで蜂蜜じゃねーか…。」

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