5億のオレん家。モンスタースポット。
酔玉 火種
第1話 突き上げられるベットの衝撃で目を覚ました。
ドゴォ――――ン!
「な!なんだ!」
大きな振動で目を覚ました俺は周りを確認すると、俺のわきのそばに、ベットの下から鋭い突起物が貫いていた。
「ピギィギィギィ…」
突起物の根元を確認するとグレーの毛並みが目に入り、よくよくみると大型犬サイズの兎だ。兎だが…。
「目がこぇぇぇ!」
俺の声を引き金に大兎は暴れだし、ベットを突き刺したままバンバンと飛び跳ねたことによって、俺はベットから転げ落ちた。
「ピギィ!!!」
「
MISAとは俺が作った世界で初めての高性能AIである。いつもなら俺の家に設置してあるセンサーを介して『おはようございます。マスター。朝食の準備ができています。』とアナウンスされるのだが、何の返事もない。サーバーが落ちたか?俺は大兎から逃げるようにリビングを抜けてキッチンに駆け込む。
ドゴォ――――ン!
追ってきた大兎がリビングに置いてあるテーブルに激突してベキベキに破壊する。テーブルの上にあった俺の食事もぶちまけられる。
「マジかよ!お前、兎だろ?!兎だろ?!」
頭から生えている1mちかい長さの角は、リィ―ン。リィ―ン。と何か得体のしれない闘気を放っている。ゆっくりと大兎がこちらをむく。いや、狙いを定める。
ゴクリ
生唾を飲む。
カッ、カツカツ、ツツツ、、、
ドゴォ――――ン!
俺の横。台所の隅にあった大型の冷蔵庫が大破する。リビングの床で足を滑らせていなかったら、俺が冷蔵庫みたいにスクラップにされていた。
俺はキッチン台においてある12本セットの匠包丁の長い物を取り、大兎に投げつける。
カキッ!
大兎が首を軽く振るだけで俺が投げつけた包丁は角によって軽く弾き飛ばされる。
「うぅ、うあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」
焦った俺は次々と12本セットの匠包丁を投げつける。
カキッ! カキッ! カキッ…!
最初の包丁もあわせて11本の包丁が安々と弾き飛ばされ床に転がっている。最後の頼みの残り1本の包丁を握りしめて大兎の顔を伺う。
ニヤリ
全身に悪寒が走った。小学校にいた奴らの目。弱者を見つけいじめをするときの
「―――!?俺は!俺は!!」
あの頃とは違う!俺はAI開発で富を得た!何もなかった子供時代とは違うんだ!そんな顔で!そんな顔で!
「俺を見るんじゃねぇぇぇぇぇえぇぇぇ!!!」
油の入った鍋を大兎にぶちまけ突進する!大兎は少しびっくりするが弱者相手にこれっぽちも負けるとは思っていないのだろう。笑いの弧がさらに大きくなり、力を大きく溜めた強靭な足のバネがはじけ…。
すて――ん。
油で滑った大兎は、空を飛ぶヒーローのようなポーズでポカンと俺を見上げる。俺は突進した勢いをそのままに包丁を大兎の首に突きたてる。
「…ピギィ!!!」
大兎は俺を振り払おうと大きく暴れるが、何度も何度も油で滑っている。俺はただただ包丁が抜けないようにと体重をかけて奥へ奥へと突き刺していく。
「…ピギィ…ィ…」
―― ホーンラビットを倒した ――
―― 山村太郎はLV2に成長した ――
―― にんじんを手に入れた ――
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…耳鳴り?…はぁ…ぁ…」
『おはようございます。マスター。朝食の準備ができています。』
びくっ
気を抜いたときにいきなり声をかけられたため、全身に鳥肌がたつ感覚に襲われた。
「
『動物?と言われますと?』
目の前にあった大兎の死体はなく、周りを見回すと冷蔵庫もリビングもいつもの日常のように整然としていた。
「はぁ?夢?…そんなわけあるか!
『了解しました。マスター。』
そこには不自然なノイズが入るだけのリビングが映し出されていた。
「
キッチンの映像には一つだけおかしな点があった。1本の人参をつかんでいる俺が唐突に出現した。その時間は6時12分。無意識で硬く握っていた人参に目をむける。
「なんだ、これは…。」
『マスター。
「それは俺のほうがききたい…。」
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