第5話
起きてー くろ
昨日と同じように
「ふぁ、んー」
ベッドの上で背伸びをする。十分に体をほぐし終ったらベッドを降り洗面所へ向かう。
昨日と同じ顔が鏡には映っている。
「まだ、雪だ」
髪が水に触れないように注意をしながら顔を洗う。タオルで水分をふき取りリビングに向かう。
リビングに入ると結衣がこちらを向いて言う。
「おはよー」
「おはよう、あれお母さんは?」
「もう仕事に行ったよ。あ、今日は帰ってくるの遅くなるって」
「そうなんだ。じゃあ、昼食と夕食はどうする?」
「お金置いていったからそれで何か買ってきてだって」
これはチャンスだな。
「じゃあ、今日は俺が料理を作るよ」
「くろ兄、料理できたっけ?」
「いや、試しに作ってみようかなと」
「へぇー、楽しみに待ってるね」
「おう」
母親が作ってくれていた朝食を食べて学校へ行く準備をする。鞄に体育着と筆記用具、それと昨日終わらせた課題を入れる。服を着替えるためにクローゼットを開ける。
何時もの服装でなくなぜか可愛らしい洋服に代わっている。
はぁ、何となくわかっていたけど…… 他に切るものもないし今日はこの中から選ぶか。
一番普通そうな洋服を取り出す。って昨日の服の色違いじゃん。玄が掲げている服は昨日着ていた猫耳パーカーの色違いであった。
仕方ないこれにするか。昨日は黒色で今日は青色か。フードを被らなければ猫耳パーカーだと気づきにくいしな。
猫耳パーカー(青)に着替えて鞄を持ち玄関へ向かう。
リビングを通るときに結衣が言う。
「あ、今日も可愛いね! いってらっしゃーい」
「結衣も早くしろよ。遅れるぞー、いってきます」
はーい、という声を聞きながら家を出発する。
今日は時間があるので裏路地を通らずに進んでいく。何か視線を感じるが気にしないでいよう。碧と話していた公園の前を通る。
「あれ? 碧どうしたんだ?」
公園の前に碧が立っていた。近づいて話しかけると
「あ、玄が来るのを待ってたの」
待ってくれていたのか。もっと早めに来ればよかったな。
「えっ、ごめん、待たせて」
「いいえ、いいのよ。勝手に待っていたのは私だから」
「じゃあ、明日もここで集合する?」
「してくれるのかしら?」
「いいよ。明日、今日と同じ時間でここに集合ってことで」
玄は出会って二日の美少女と一緒に登校する約束をした。
誰にも絡まれることなく無事登校をし終えた。今までちらちらと見られているような視線だったが正門をくぐるとみなまじまじと見る人たちが増えた。昇降口にたどり着きスニーカーから学校がデザインした上履きに履き替えようと下駄箱を開く。
どさっ、紙が水の様に流れ出てきた。
「うぉ! びっくりしたぁ」
つい声が出てしまった。いたずらか? なんだろうと思い流れ出てきた紙の一つを手に持つ。手紙か? なんて書いてあるんだ?
一目惚れでした、あなたの事がすきです。付き合ってください…… ん? どうゆこと?
人生初めてのラブレターに玄は理解が追い付かなくなった。隣を見ると碧も同じようにラブレターの滝にあっていた。
「……碧、これってどうすればいいんだ?」
自分で考えることを諦め碧に頼ることにした。碧はラブレターを受け取ることに慣れているようでうんざりした表情を浮かべて言う。
「……はぁ、これだけの量だし、一人ひとり返答するには手間がかかるわ。無視が一番よ」
「そ、そうか……」
このままでは邪魔になるので大量のラブレターは鞄にしまっておくことにした。
『ガラッ』
教室のドアを開けると中にいたクラスメイト全員がこちらを向く。そして、一人の男子生徒がこちらに近づいてきた。
「あの、玄さん。話があるんですけど」
「ん? あぁ、君はドアの前で立ってた人だよな。名前は五十嵐くんだっけ?」
ラブレターの事で少し疲れた玄がそういうと嬉しそうな表情を浮かべる。
「覚えていてくれたんですね。ありがとうございます」
「そんな、礼を言われるほどの事でないともうけどな」
「いえ、嬉しかったです。それで……お、おれと……」
そんな真剣な表情をしてどうしたんだ?
五十嵐が何かを言いずらそうにしている。数秒待つと決心した表情で言う。
「おれと付き合ってください」
…え? ど、どうゆうことだ? ん? あぁ、え?
玄は男から告白をされるという事実に驚きを隠せないでいた。ラブレターでそこまで動揺をしなかったのには男の自分にラブレターを送るのは女の子だと考えていたためだ。だが実際は9割方男子からのラブレターである。残りの一割は見た目は可憐な美少女だが行動や言動が男の子っぽいというギャップにやられて女子生徒である。
玄は混乱しながらも返事をしなくてはと思いう。
「ご、ごめん……」
「お、おれのどこが悪いのかな? 直せる所なら直すから!」
直す直さないとかの話ではない、生まれる変わる位の話である。そう思い言う。
「いや、無理だと思うけど……」
五十嵐は玄の返答に一瞬びくっとした後うなだれるようにする。
「…そ、そうだよね。ごめんね、朝から…いきなり迷惑だよね……」
「迷惑とかそうい訳じゃないんだ、ただ……」
ただ、男同士だから。そう言おうとしたところ教室のドアが開いた。
『ガラッ』
「はい、席についてください。 ……ふぇ? どうしたんですか?」
日向先生が教室に入ってきた。教室の空気がおかしいことに気付き疑問の声を上げる。近くにいた生徒が日向先生に事情を説明した。
「そうだったんですか…… ご、ごめんなさい。変なタイミングで入ってきちゃって」
五十嵐が少し明るく振る舞う。
「いや、大丈夫です。丁度ふられたところなので」
「そ、そうですか。……あ、おはようございます!」
皆さん、席についてくださいね。日向先生がそう言い皆を座らせる。全員が座ったことを確認し言う。
「昨日課題を回収し忘れちゃって、皆さん持ってきてますか? 持ってきている人は後ろから回収してください」
クラスの一番後ろの席の人が課題を回収していく。玄も一番後ろのため同じように回収していく。
「ありがとうございます、それでは今日の日程は…… 1時間目に身体測定をしていきます。男子生徒の皆さんは多目的室、女子生徒の皆さんは体育館に体操着に着替えて移動してください。どこにある教室なのかは黒板に紙を貼っておくので見てください。2時間目はクラスの係を決めていきます。何か質問ある人いますか? 無いようなのでこれで終わりにします」
きりーつ、れー、ありがとうございました。
移動する教室を確認するために黒板に近づく。人だかりができているので後ろから眺める様にする。視聴覚室は……4階か。場所を確認し一旦席に戻る。
「玄、一緒に行こ?」
「え、ごめん、できないよ?」
「な、なんで?」
断られるとは思っていなかったようで少し動揺した表情をして碧が言う。
「な、なんでって言っても行く場所が違うから」
男子と女子じゃ教室分かれるし。
「どうゆうこと?」
『キンコンカンコン』
授業が始まるチャイムが鳴る。
「本当にいっしょにいけないのかしら?」
碧が余りにもしょんぼりした顔をしていたので
「わかったよ、一緒にこう」
「本当に? 一緒に行きましょ」
先程までが嘘のような嬉しそうな表情をして言う。
碧と一緒に女子更衣室まで行く。女子更衣室の前にたどり着いた。
中から会話が聞こえてくる。
「……ほんと、人形さんみたいだよね」
「ねー、羨ましいー、スタイルいいしね」
「あなたも同じくらいじゃない。私なんて……」
「ぷにっぷにだもんねー」
「そ、そこまでじゃないわよ!」
まだみんな着替えているようだ。
「それじゃあ、俺は……」
男子更衣室に行こうとしたが廊下を歩いていた女性教師が話しかけてきた。
「君たちもう時間がないわよ。早く着替えなさい」
女子更衣室のドアを開き碧と玄を中に入れる。
「あ、ちょ……」
小さい体では抵抗することもできず男子禁制の場所へと立ち入る。
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